第4話

 再びゲーム世界にやって来て、ず最初にしたことは、【アイテムボックス】の中身を確認することだった。


『こんな高度なゲームが存在するはずがない』という強い念は、考えても分らないのでひとまず先送りし、今目の前にあるこの状況を楽しもうと開き直った。


課金要素がない以上、どうせ失うものはないのだ。


まだ確証は持てないが、遊んでいる時間さえリアルではカウントされないみたいだし。


空間を突いてステータス画面を開き、【アイテムボックス】の所を押すと、別な場所に新たな画面が映し出されて、その中身が表示された。


30万ゴールドと身分証、ポーション5つに野宿用の大きなテントが1つ、数枚の毛布、タオル類、それから複数の着替え。


革製の兜と鋼鉄の盾、短剣が1つずつ。


運営がサービスと言っていたのは、この金額のことかな。


画面を閉じ、改めて周囲を見回す。


木々や植物の深い香りが漂う中、うっすらと見える都市を目指して歩き始めた。



 「ギギッ」


5分もしないで、森から変な魔物が現れた。


発育の良い小学生くらいの背丈で、深緑の小汚い身体に腰布だけを纏った魔物が2体。


それ々が手に石斧を持ち、こちらを睨んでいた。


『鑑定』が勝手に発動する。


『名称:ゴブリン

ランク:N

素材価値:なし』


「自動鑑定とは恐れ入る。

小説でお決まりの展開みたいだな」


長剣を抜きながらそうつぶやくと同時に、向こうから攻めて来た。


1体を切り裂くと、もう1体の攻撃を脇腹に食らう。


防具のせいで少しも痛くはないが、少なからずショックを受ける。


そのもう1体の首を刎ねた後、ちょっと反省した。


「空手で戦えば楽勝だったけど、剣は初めて扱ったから、どうにも戦い辛い。

少し練習しないと駄目だな。

この森で経験を積んでいくか」


自分の長剣スキルがKだったのを思い出し、そう独り言つ。


「そう言えば、死体、消滅しないんだな」


何と無くそういうイメージだったので、死体が残るのが意外であった。



 手近の森に入って約6時間。


見つけた魔物にひたすら剣を振り続けた。


ゴブリンと、豚の顔をした大人の背丈ほどもあるオークしかまだ戦ってはいないが、それでもかれこれ100体以上は倒したはず。


漫画やゲームに対する先入観で、魔物がどんどん湧いて出て来るように思っていたのだが、そんな事はなかった。


死体が残るから、恐らく普通に繁殖した魔物達だったのだろう。


ステータス画面を開いてスキルを確認すると、長剣はまだKのまま。


パーソナルデータにも変化は見られない。


よくあるラノベのように、体力とかが数値化されているものなら、今の自分の状態がはっきりと分るのだが、アルファベット表記では、体感でしか判断できない。


普段から鍛えているのでこの程度の戦闘では息も切れないが、少し暗くなってきたため、もう都市へと向かうことにした。


『マッピング』のスキルがあると、こういう時に非常に便利だ。


空間に表示された画面を頼りに、俺はまた都市へ向かって歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る