第3話

 「え!?

何処だよ、ここ!」


思わず大声を出してしまう。


先程までは確かに自室に居たはずなのに、眼前には未舗装の大地と森林、反対側にはうっすらと都市のような情景が目に映る。


自分の姿を確認する。


鏡がないので顔は分らないが、着ている服は愛用の部屋着ではなく、黒の長袖とズボン、その上に革製の防具と籠手、厚手のブーツを履いていた。


腰には1本の長剣が装備されている。


「ゲームのキャラみたいな恰好かっこうだ。

・・まさか、本当にゲーム内に居るとでもいうのか?」


大地を踏みしめている感覚に呆然ぼうぜんとしていると、何時いつの間にか目の前で、空間に表示されたメールのような物がチカチカしている。


マウスがないので指でつつくと、それが開いた。


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氏名 西園寺 修(16)


パーソナルデータ 力G 体力G 精神G 器用G 敏捷F 魔法耐性G


スキル 長剣K 体術E 『鑑定』B 『マッピング』C


魔法


ジョブ 無職 


鎧ランク 


【魔物図鑑】


【アイテムボックス】


蘇生可能数 1


ログイン経過時間 〇〇〇時間〇〇分〇〇秒


【ログアウト】


______________________________________


以前読んだライトノベルに出てきた、ステータス画面というものだろうか?


もしそうだとすると、俺のステータスはかなり低いということになる。


SやAが1つもないどころか、ほとんどがGで、中にはKまである。


小説では転生者や転入者にはチート能力が備わっていて、その辺の凡人だった奴がいきなり最強クラスになっていたものだが、どうやらこのゲームはそこまで甘くはないらしい。


【 】の文字はタップができるようで、真っ先に【ログアウト】を叩いてみる。


すると3秒くらいで、自分の部屋に元の姿で居た。


「・・マジか。

今のゲームってここまで進んでるのか!?

・・いやいや、幾ら何でもおかしいよな。

こんな技術があったら今頃世界が変わってる」


パソコン画面を見ると、先程のゲーム画面が少し変化していて、題名の下に『ログイン』の文字、画面の右上に『ヘルプ』、あとは先程ゲーム内で見た光景が表示されている。


『ヘルプ』をクリックすると、ゲームの説明と思われる文章が並んでいた。


『 パーソナルデータやスキルのランクは、SからKまでの12段階あります。

Kは全くの素人で、一般の子供や女性、軟弱な男性がこれに当たります。

Jは屈強な男性や、それなりの訓練を積んだ女性で、Iともなると一角ひとかどの戦士に相当します。

各ランクは、1つ上がるだけで通常のゲームならレベルが50以上は違いますからご注意ください。

その上昇幅には個人差が存在します。

当然、上のランクに行くほど上がり難くなります。

パーソナルデータは戦闘や訓練を積むことで上昇し、スキルランクは練熟度の他、希に特殊なイベントで上昇することがあります。

『 』でくくられたスキルはユニークスキルで、非常に珍しいものです。

そのスキルを所持している場合、あまり口外しない方が良いでしょう。

因みに、魔物のランクはSからNまでの全15段階あるので、お間違いなきように。


 ジョブは現在就いている職業を意味します。

通常は職を変えるごとに変化しますが、このゲーム内で犯罪として見做みなされる行為を内包した職業に手を染めると、たとえ新たな職業に就いてもその記録だけは消えずに残りますのでご注意ください。


 鎧ランクは特殊イベントに成功した場合にのみ表示されます。


 魔物図鑑は、ゲーム開始後、任意クエストを成功させることによって機能し始めます。


 蘇生可能数は文字通り、こちらが指定する試練をクリアすることにより、たとえ死んでも生き返ることのできる回数です。

ゲーム内で死亡すると瞬時にログイン前の場所に戻され、再度ログインすると、登録した拠点か、死亡した場所のどちらかを選択して健康な状態で始められます。


 初回にログインした際、あなたが身に付けていた物は、こちらが特別に用意した初期装備です。

特に長剣と短剣は、それなりに良い物ですから、処分する時は慎重に。


 ゲーム開始に当たり、当面必要になると思われる物をアイテムボックスに入れてあります。

あなたのご活躍を期待して、多少サービスしてありますので、どうか末永くプレイしていただけるよう十分に励んでください。


 なお、ゲーム内におけるシステムや諸問題は、あなたご自身がプレイの中で見出し、解決してください。

こちらからは一切お答えできません。 』 


読み終えて、直ぐに飽きるような簡単なゲームではないこと、自分のステータスがそれ程低くはなかったことの両方に安堵する。


レアスキルを2つも持っていたしな。


冷めてしまった珈琲を飲み干すと、俺は再度『ログイン』ボタンをクリックした。

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