第2話

 「何だこれ?」


初期画面にしていたはずなのに、パソコンの画面上には見知らぬサイトの表示がある。


『○○の物語』


題名だろうか?


普通、こんな題名つけるか?


○○って何だよ。


大きくそう書かれた文字の下に、『ENTER』のボタンだけが点滅している。


画面はゲームっぽいので、とりあえずそこをクリックした。


俺のパソコンには高性能のウイルス対策ソフトが入っているし、変だと思ったら直ぐに閉じれば良い。


クリックに反応して表示が変わり、確認画面が出る。


『このゲームには課金要素はございません。

最後まで無料でお遊びいただけます。

但し、あなたの人生や価値観を劇的に変えてしまう恐れがございます。

それでも、プレイなさいますか?』


人生が変わる?


随分と大袈裟おおげさではあるが、課金要素がないというのは好感が持てる。


学校でも、小遣いの大半をゲームに課金してるというクラスメイトがいたけれど、配信が停止になれば何も残らないネットゲームにそこまで入れ込むのはどうかと思う。


『はい』をクリックする。


更に表示が変わって、氏名や性別、生年月日、血液型、メールアドレスを入力する画面が出て、それを済ませると、最終確認画面が現れた。


『このゲームをプレイできるのは、この世界であなたお一人です。

よってあなたには守秘義務が生じ、このゲームの存在やその効果を、無闇に公言することが禁じられます。

お守りいただけない場合は、参加資格が取り消されることがございますのでご注意ください。

また、ゲーム内で死亡した場合、最初の1回だけは無条件で蘇生が効きますが、2度目からはあらかじめこちらが指定した試練をクリアしていない限り、多額の現金を支払って継続するか、または自身の生命を失うかの選択を迫られます。

ちなみに、あなたがゲーム内で過ごしている間、この世界の時間は止まったままです。

だからといって、やり過ぎには十分にご注意ください。

あなたの身体に重大な支障をきたす恐れがございます。

・・以上、ご同意いただけますか?』


俺はゲームにうといが、ネットゲームでプレイするのが俺一人だけなんて、そんなの有り得ないよな。


他は全部NPCだとでも言うのか?


それに、ゲームしている間、この世界の時間が止まる?


そんなの不可能だ。


それまでプレイする気満々だった俺は、ここで冷静になる。


NPCと決まり文句の会話をしたって、俺の目的は叶わない。


費用が掛からないにしても、胡散うさん臭いことこの上ない。


『はい』にカーソルを合わせ、クリックのために握っていたマウスから手を離そうとした時、突然大きめの地震が起きた。


『あっ』と思った時にはもう遅かった。


地震の反動で、マウスを無意識にクリックしてしまっていた。


そしてその瞬間、俺は見知らぬ大地に立っていたのだった。

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