第5話 大好きだ、故に……
「綺麗な朝だな……」
眩しい日光に照らされ、目を覚ます。
日が眩しいなんてゲームでは感じた事がなかったな。
少し苦笑交じりに笑い、改めてここが現実であると実感する。
「すぅ――すぅzzZ」
俺の隣では、ネグレリアが寝息を立てながら幸せそうに寝ている。
その顔は、相変わらず美しい。
こんな可愛い美少女がパートナーなんてな。
「ははは――幸せそうに寝て、可愛いなぁ」
彼女の目に掛かりそうな、髪をよける。
ついでに少しだけ、頭を撫でる。
「君を守りたい………だから」
昨日星々に誓った思いを唱える。
大好きな君がいなくなるなんて嫌だからな。
「少し君に辛い思いをさせるかもしれない」
俺は自分に甘いから、君の為に誓う。
“俺の全てを掛けて次の魔王を全力で倒す”
誰よりも早く、誰よりも難しい条件で。
「そして全てを君に上げる。」
【魔女】という“呪い”が掛かった君が笑える世界に変えるには、誰よりも大きな功績がないと変わらないだろう。
「ははは、本当に綺麗な朝だ。」
未だ寝息を立てて安らぐ君を照らす朝は、不思議なくらいに綺麗だ。
さて、俺はもう少しこの景色を楽しむとするかな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「まさか、正午まで寝るなんて……」
「もう!プラント君が起こしてくれれば良かったじゃないですか!」
辺りは既に正午、それまで彼女はぐっすりだった。
目を覚ました直後も、ふにゃふにゃな声での
“おふぁようございましゅ”は中々の破壊力だった。
「いや、起こすのも可哀そうかなって思って……。」
「もう!もう良いです。今日は何するんですか?」
そう、問うネグレリア。
全力でやる以上、滅茶苦茶疲れるがこれをやるしかあるまい。
危険が伴うが仕方あるまい。
――今日やる事は
「今日は、いや今日からDeathバイトをしようかなと思う。」
「“ですばいと”って何です?」
ネグレリアが不思議そうに首を傾げる。
まぁ当然といえば当然の話。
これはプレイヤー内でそう呼称されていただけだから。
“Deathバイト”
その名の如く“死のアルバイト”としてプレイヤー達を震撼させるバイトの一つ。
成功率の異常な低さに加え、失敗するとゲームが最悪クラッシュするハイリスクから、数多のプレイヤーが嫌煙してきたという。
俺でも実行するのは今回が初めてなほどだ。
俺も、この世界に来て直ぐはこんな事しようとすら思わなかった。
だけど……
「Deathバイトは、『五大宗教』全てに喧嘩を売る超リスキーで馬鹿げた行為だ。」
「ふふふ、何ですかそれ?」
君をいつでも救える様にする為だ。
今は時間が惜しい。
少しでも早く強くなる為。
――俺は、この史上最悪と言われた、本作最高効率のお金稼ぎに挑んでみようと思う。
簡単に説明すると、本作におけるアルバイトは二種存在する。
“1種目が普通のアルバイト”
これは読んで字の如く、日本でもあった感じの普通のアルバイトである。
基本、街中央にある“仕事応援仲介所”と呼ばれる場所で仕事を受注する事が可能。
1日1回受注でき、受注内容は己の強さや権力、財力、等により自分に合ったバイトがそこで紹介される。
俺が遊んで生きるだけなら、少しづつ強くなってバイトだけしてればお釣りがくるほどである。
だが、今必要なのは“魔王討伐の功績”
君に全てをあげるため、俺は全力を尽くさないといけない。
だから、俺が挑むのは
“2種目、裏アルバイト”
簡単に説明する。
この世界即ち“アルカナ王国の勇者”には、5つの“大宗教”が存在する。
『英雄教』
アルカナ王国における勇者を
『魔術教』
この世は魔術こそが心理であるとし、生涯を掛けて魔術と共にあり、極め続ける事を目的とする宗教。特有の黒三角帽子がトレードマーク。
『剣神教』
この世は剣こそが心理であるとし、生涯をかけて剣と共にあり、極め続ける事を目的とする宗教。勇者の剣の首飾りがトレードマーク。
『真龍教』
遥か太古に存在したという龍を神とし、この世の平和は龍によるものだとし、龍に祈りと供え物をし続ける宗教。龍の耳飾りがトレードマーク。
『厄災教』
厄災こそが神が与えた試練であるとし、災いや戦争を好み平穏を憎むかなりぶっ飛んだ宗教。トレードマークは信者の死んだ目。
これら全ての宗教では入信時に“試練”が課せられる。
また、試練を突破すると報酬に加え、改めて信者として迎えられる。
もう分かっただろうか?
そう、このDeathバイトは同日に『五大宗教』全ての“試練”を全ての信者にバレない様に同時に達成するという馬鹿げた背信行為。
確か、五大宗教の信仰者の割合は“エトワール城下町”だけも総人口の半分程。
つまり、試練を受けこの街から出るだけでも超高難度くそげー。
だけど、これを達成すれば確実に“魔王討伐”に近づく。
「ネグレリア。」
可愛い顔で首を傾げる君に、強い口調で呼びかける。
「何ですか、プラント君?」
「地獄までついてきてくれる?」
笑って問いかける。
俺はずるい野郎なのかもしれない。
そんな事分かり切ってるくせに。
「絶対に逃がしません。」
クスクスと笑みをこぼしながら言う君。
あぁ俺は最高にズルい奴だ。
「じゃあ地獄へ行こう。」
「――――はい。」
手を強く繋いで、歩き出す。
大丈夫、俺なら大丈夫。
君となら、君がいてくれるなら。
さぁ、魅せてやる。俺達の実力を
――――――――――――
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異世界 魔王討伐 RTA ラグナ・ムアの瑶光 @niziironobouningen
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