夏の日の朝に願う
シンカー・ワン
Please. Don't Forget
昔と言うには近すぎて、少し前と言うには遠すぎる、
半世紀とちょっと前、世界を巻き込んだ争いがあった。
何年か続いたそれが終わりを告げた年の夏、
日本のふたつの地方都市が光に包まれた。
閃光の下、灼熱の業火と荒れ狂う暴風で、
多くのものが焼き尽くされ、吹き飛ばされた。
残ったものは瓦礫の山と、そして多くの命の残骸。
さながらこの世に生まれた地獄。
いつもと変わらない、夏の朝、一瞬で多くのものが奪われた。
生まれたばかりの赤子も、これから人生を謳歌しようとしていた若者も、
父も、母も、老人たちも、友も、皆、光の中に消えていった。
――忘れないで下さい。
ほんの半世紀と少し前、そんな出来事があったことを。
哀しい記憶を伝えることの出来る人も少なくなり、
学ぶべき場所でもただあった事としてのみ教えるだけで、
その惨劇の真実は記憶の彼方へと消え去ろうとしてます。
だから、忘れないで、あの夏の日の朝を。
あの閃光が二度と人々の上で輝かないことを願う。
人類がそんなに愚かではないことを願う。
今年もまた、あの日のような夏の朝が来る。
その日、何事もなく空を見上げられることを、静かに願う。
夏の日の朝に願う シンカー・ワン @sinker
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