源噺

或る井戸掘りが安房のとある屋敷に参り

広き庭に大きな穴掘り進める

直に土が湿となり豊富なき出ずる

に脚を取られた井戸掘りは崩れ行く足場に呑まれ地下の奥底へと雪崩落ちる

其処は底の様に暗く唯一人

地底に広がる隧道に響く妖しき人声に誘われ井戸掘りは暗中を歩む

人声の根には在り

落ちた井戸掘りは暗中を逃げ惑い何とか地上へ帰る

病みし井戸掘りは再び井戸下の闇を覗き見る事なし


[記録:蟲喰前乃状態]

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【古怪記】 朝詩 久楽 @258654

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