第三話 ミア・ガルシアの魔術法
昼下がりの頃、私たちは南の平原に着いた。
「ガンギウスか~。 ガンギウスって、どんな魔物なの?」
「紫色の体をしていてね、とにかく凶暴なんだって~」
「クロエも見たことないの?」
「どのくらい強いのかは知ってるけど、世間話とかでしか聞いたことないかな~」
「奴は動くものすべてを襲う習性があってな。 毎年多くの人が命を落としている」
「結構強いんじゃ……」
リリーが話し出そうとした途端、翼の羽ばたく音とともに猛獣のような鳴き声がした。
振り返ると恐竜のような生物が現れた。
「来たぞ! 作戦通り、私が囮になる」
リリーとアリスはガンギウスの方へ向かった。
ガンギウスはリリー達に気が付いたようだ。
「リリーさん達、大丈夫かな……」
私たちは後方でリリーとアリスを見守る。
「だいじょぶだいじょぶ、めっちゃ強いから。ガンギウスくらいならあの2人だけでも倒せるんじゃないかな」
クロエがそういうなら心配はいらないか。
リリーとアリスは二手に分かれた。
リリーはガンギウスの前方に行き、アリスはハイエナのように横からガンギウスに近づく。
ガンギウスはリリーしか見えていないのか、リリーの方へ一直線に向かっていった。
リリーの目の前に来たガンギウスは、攻撃をしようとしたときの隙で右足を切り落とされバランスを崩した。
アリスがすかさず二刀流のナイフで翼を斬り刻む。
「クロエ! ミア!」
「は、はい!」
私たちはガンギウスが動かなくなるまで魔法で攻撃し続けた。
20秒ほど経っただろうか。ガンギウスはピクリとも動かなくなった。
思っていたよりもあっさりと終わってしまったので、倒したという実感が湧かなかった。
まあ、ほとんどはリリーさんたちが倒したけど……
「やったよミア! すごいじゃん!」
「みんなのおかげだよ~」
そんな話をしながら、倒したガンギウスを解体し素材として持ち帰った。
「あの、リリーさん」
「どうした?」
「今日はありがとうございます。私足手まといなのに……すみません」
「気にするな。私こそ、ミアに付き合わせてしまって申し訳ない」
「いえ、いい経験になりました! ありがとうございます」
私たちはギルドに戻り、ガンギウスの素材を渡した。
「いや~迫力すごかったな~」
私は解散した後、本を買いに行くために一人歩いていた。
魔法はいろいろ使えるようになったけれど、冒険者としてはまだまだ半人前以下。
少しでも強くなるために、魔法や剣術の本を買いに行くのだ。
本屋に着いた私は、お目当ての本を探す。
戦闘関連のものは一番メジャーなのか、『魔法について』や『剣術について』など、同じ著者の本ばかり置いてあった。
棚にある本をくまなく見ていると、本棚の天板に禍々しい雰囲気を放つ本が一冊見えた。
手に取ってみるとかなり分厚く、表紙に知らない言語と魔法陣が書かれていた。
なんか、面白そう。
「これ売り物かなあ」
「すみませーん」
「どうなさいましたか?」
「この本、棚の上にあったんですけど商品ですかね……?」
店員も初めてこの本を見たようだ。
「とりあえず誰かの落とし物かもしれないのでこちらで預かっておきます」
「じゃあ、私が持ち主に届けましょうか?」
「えーっと、もしかしたら落とし主が取りに来る可能性があるので……」
「私、人探し得意なんです!」
「そういわれましても……」
私は5分ほど説得を続け、なんとか店員を口説き落としその本を手に入れた。
私は街のベンチに腰掛け、さっそくその本を開いてみた。
やっぱり中身も知らない言語で書かれていた。
この街で使われている言語はわかるけれど、すべての言語がわかるわけではないらしい。
1ページ1ページ、描かれている絵を見てみた。
「うーん、よくわかんないなあ。魔術のことについて書かれてるみたいだけど……」
この世界での魔法と魔術の違いって何だろう。それぞれ一長一短があるのかな。
あとでクロエに聞いてみよっと。
それから私は毎日簡単な依頼を受け、魔法の練習をした。
クロエにあの本について聞いてみると、やっぱり魔術の本だった。
クロエ曰く、白魔術と黒魔術が描かれているらしい。
白魔術は代償を必要としない魔術で、黒魔術はその逆。
興味が湧いたので、魔術についての本を買って調べることにした。
魔術も魔法と同じようにマナを扱うらしく、正しく儀式を行えば誰でも習得できる。
また、魔術の中には魔法陣を描いて行うものや、定められた位置に定められたものを設置するものなど、いろいろな種類がある。
と、その本には書いてあった。
やって覚えた方が早そうなので早速魔術をやってみた、がパッとしない。
確かに面白いんだけど、魔法の方が攻撃するまでが早いし思うように攻撃できない。
「どうにかして使いたいなぁ」
私は魔術をうまく扱えないか研究した。
研究といっても本をたくさん読むだけだけど……
私が研究した結果、ある扱い方を生み出した。
それが魔術式魔法だ。略して魔術法!
安直な名前だけど、説明するとこんな感じだ。
魔術は魔法と同じようにマナを使って何かを生み出す。
その時、魔術の儀式周辺には大量のマナが集まってくる。
そのマナを利用して魔法に使うと、体内マナさえあれば強力な魔法が撃てる、ということだ。
そしてついでに魔術も行える一石二鳥。
今まで魔術を行う最中に魔法を使う人が少なかったから誰も気づかなかったのだろう。
私はこの魔術法を確かめるために依頼を受けた。
魔法陣には魔力が上がる効果の魔法陣を描き、相乗効果を狙った。
そうして魔法陣の中で待っていると、ようやく魔物が現れた。
グリムオンよりは大きくないが、それでも大きい。
私はすぐさま魔法を撃ち込んだ。
すると、私の杖から魔物を包み込むような炎が巻き起こった。
「えぇ⁉」
驚きのあまり声が出た。
魔術のバフ効果だけでは説明がつかないほどの威力だった。
「だ、大成功……?」
ミア・ガルシアの冒険譚 カレハ @kareha256
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ミア・ガルシアの冒険譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます