第弐話 暗殺者は友達が少ない

入学式の朝、俺はなぜか校長室に呼ばれた

恐る恐る校長室に入ると、そこには山下先生ともう1人の美人な女教師が向かい合っている2つのソファーに座っていた。


「どうぞこちらに」


俺が校長室に入り、どうすればいいのかわからず混乱していると美人教師が山下先生の隣りを手で指した

どうやら、そこに座れと言うことらしい

最終的に席順は俺と美人教師が向かい合って座り、俺の右隣に山下先生が座っていると言う形になった


「あの…俺、なんて呼ばれたんでしょうか?」


元暗殺者がアサシンアサシンになると言うのは、そこまで珍しい話ではない

だが、俺はあまりにも大物すぎる

正体がばれると、この高校を退学にさせられる可能性だってある


「それはもちろん神田君の正体のことです」


終わった、俺の高校生活終了

俺は小さな声で隣の席に座っている山下先生に小さな声で美人教師に聞こえないように話しかけた


「山下、俺の正体バラした?」


「すいませんバラしました。ですがこの女、石川先生は、後に1年生の副担任になる人物です。隠すのは難しいと判断しました。」


「じゃ、じゃあ担任は?」


「それは、ご安心を、一年の担任は俺ですので」


なら、担任に俺の正体が隠せるのか疑惑は解決だ

だが、どっちにしろ、今の副担任問題は解決したしていない


「2人とも、何こそこそ話してるんですか?」


「す、すいません」


「私は神田君にに2つの質問があります。どちらも正直に答えてもらえないのなら、遠慮なく大学にしてしまいまのでご注意を」


俺は山下先生にまた小声で尋ねた


「なぁ、この石川先生って俺を退学にできるほどの権力者なのか?」


「この女は校長の娘です。今日も不在の校長の代理として、神田さんの相手をしていますし、この女には、神田さんを退学にさせることも可能でしょう」


入学式の今日に校長不在って大丈夫かこの高校?


「まず1つ目の質問です。山下先生と神田君はどういう関係なのですか?」


「師匠と弟子です!」


山下先生、いや山下は食い気味で答えた


「日本トップクラスのアサシンアサシンである山下先生が、世界最強の暗殺者の弟子だったなんて…」


石川先生は頭を抱えてしまった


山下はもともと無名で、どこの国家に属していな野良の暗殺者だった

だが、俺が山下を育て、今となっては世界最強の暗殺者の右腕として、暗殺者業界では、かなりの大物になっている

2年前、俺がこのアサシンアサシンの教育機関であるみがにし高校に入学したいと話したら、山下はすぐにアサシンアサシンに転職した

みがにし高校の教師は、全員が日本トップののアサシンアサシンである。だから山下は、みがにし高校の教師になるために、たった1年足らずで日本トップのアサシンアサシンになり、みがにし高校の教師になってしまったのだ


「それにしても、神田君の一時試験と二次試験の結果を見せていただきましたが、射撃も格闘術も剣術も全てが、ほぼ最下位と言う結果でした。そんなあなたが本当に世界最強の暗殺者で山下先生の師匠なんてにわかに信じられないんですが」


石川先生は、俺と山下をじっと目で交互に見た


「俺は、世界最強の暗殺者の異名を持っているとは言え、本当に死なないだけで他は全て凡才なんです」


「むしろ神田さんは、不器用で間抜けですから死なない特殊体質以外は、むしろ才能なしなんじゃないですかね」


我が弟子ながら、なかなかひどいことを言う

といっても、全て本当の事なので、何も言い返せないが

本当に、こんな俺の弟子になった癖に、暗殺者として山下はよく育ったものだ。


「まぁ理解しました。それでは最後の質問です。世界最強の暗殺者の君は、なぜアサシンアサシンの高校に来たのですか?」


なるほど、これがメインの質問のようだ

つまり、この質問にしくじれば余裕で退学にさせられるだろう


「そ、それはもちろん世界平和のためですよ…」


「嘘ですね。君は歴史上最も人を殺した人物です。そんな君が今更平和を望んでいるわけがない。現に入学試験でも1人の受験生を殺していますし」


まずい、バレてる

このアマ無駄に鋭いなぁ

もともと不器用な俺にうまく嘘がつけるわけがない

これは本当のことを言うしかないだろう


「は、初恋の人に会いに来たんですよ」


そう言う、俺の顔は真っ赤になっていただろう


「は、初恋?」


「世界一のアサシンアサシン、コードネーム小町、石川先生も知ってますよね?俺はその小町先生に一目惚れしちゃったんですよ」


コードネーム小町、それは日本所属の世界一のアサシン、アサシンの意味を持つ女性だ

コードネーム小町の綺麗な茶髪、美しさと可愛さの両方をかねそろえた顔立ち、豊満な体型、全てが俺の好み、ド直球だった


「2年前に、俺が任務で日本を訪れたときに俺を殺そうとしてきたアサシンアサシンの小町に俺は一目惚れしちゃったんです。その後、小町について調べたらこの高校の教師をやっていることを知ったので、入学したいと思った…それだけです」


俺が恥ずかしい中、長いセリフを言い終わると、石川先生は失礼にも大爆笑した


「何が悪いんですか?!俺だってまだ15歳のガキなんですよ、一目惚れだってしていいじゃないですか!」


「いいね、君(笑)面白い!」


そう言うと、石川先生は立ち上がり、


「校長の代理として、正式に世界最強の暗殺者の入学を認めます」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


入学式から2週間がたった

その間、俺には1つの誤算があった


誤算とは、コードネーム小町、俺の初恋の相手にまだ一度も会えていないと言う事だ

山下の話によると、小町は仕事の関係で、数ヶ月に一回しか来れないらしい


「青春ってのは、思ったより難しいなぁ〜」


アメリカの元大統領を暗殺した時より、青春を色濃く過ごすのは難しいかもしれない

現に、俺は今だに友人が1人もいない


「なぁ山下、友達ってどうやって作るの?」


俺は、屋上で一緒に弁当を食べている山下に聞いた


「良く分かんないです。俺も友達いた事ないんで」


アサシンアサシン業界なら、友達を作る機会もあるだろうが

暗殺者業界は誰かと友達になる事など無いに等しい

俺も山下も暗殺者業界が長いため、人付き合いの能力と言うものを幼稚園に置いてきてしまったのだ


「そういえば、石川先生に人付き合いについて聞いた時に河原で喧嘩をすれば友達になれるって言ってましたよ」


「そ、それだ!なんて天才的なアイデア!」


石川先生は恐らく、この事をふざけて言ったつもりなのだろう

だが、友人を作る能力が欠落している山下と間抜けな俺に、石川先生の真意は残念ながら読み取れなかった



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


放課後、俺はクラスでナンバーワンの陽キャに喧嘩を売ることにした


「鬼道君、ちょっといいかな?」


「神田君?なにかな?」


撃神流げきしんりゅうの鬼才の異名を持つ男、鬼道撃神流げきしんりゅう

とは、銃弾を刀で切り落とす流儀の事で、撃神流げきしんりゅうを使える人間は世界でも30人もいないと言われている

その撃神流げきしんりゅうの鬼才、鬼道は、既に世界的に見てもかなりの強者だ


「今から河原で喧嘩しない?」


そんな鬼道に喧嘩を打った理由は単純、

俺はこの男が嫌いだからだ

イギリス人と日本人のハーフで、金髪の高身長、おまけにイケメン

おまけに、入学してから2週間しか経っていないのに、もう彼女を2人も作りやがったのだ

俺は、リア充は爆発するべき派の人間なのだ


「えっと、どう言う事かな?」


鬼道は笑顔で俺の問いを返した

その笑みは、どこか胡散臭いうさんくさいい

あくまで俺の予想だが、こいつは多分腹黒だと思う


「オイ、オイ、そこのお二人さん〜何面白そうな話してるんだよ〜」


俺と鬼道の会話を聞いて、同じぐらい1年の、バーサーカーの異名を持つ日本国籍のアメリカ人、デットが近づいてきた

デットは、元暗殺者で、最終試験の時に受験生を5人殺した人間だ

ちなみに最終試験で生き残ったのは15人なのだが、デットが5人殺したため、試験に合格し一年生になったのはたった10人だ


「喧嘩なら俺も混ぜてくれよ〜」


デットは分かりやすく武闘派な性格をしている。だが、体格はそこまで良くなく、身長も俺と同じぐらいの170センチ前後、ちなみに髪型はドレッドヘアーだ


「ちょっと待って?状況が飲み込めないんだけど?」


鬼道がこめかみを抑えながら言った


「俺が喧嘩の立会人をさせてもらう」


そう言ったのは、教室の扉をこじ開けて入ってきた山下だった


その後、山下が喧嘩の詳細を決め、河原に向かった

鬼道は表面的には納得のいっていない表情を浮かべていたが、内面では、喧嘩を楽しみにしているのが透けて見えていた

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暗殺×暗殺=青春 メロンパン @panti

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