第9話 研修医
海老原泉とは、総武線津田沼駅で待ち合わせた。
足首まであるニットのワンピース。露出は少ないが体の線がはっきり出ている。
「どうする? まずどっかで飲む?」
「ううん、とにかくしたい」
表情も変えずに泉は言った。
「え、おかしい? だって、3か月もしてないんだよ」
「本当に? 君なら男には困んないでしょ」
はっきり言って泉は美人だった。もっとも彼女自身は全くそのことに気が付いていないようだ。
「まったくもてないから、スタビやってるんだよ」
泉は爆笑した後真面目な顔でそう言った。
「話はあと、まずしよ、ね、はやく」
結局、泉に引きずられるように亮はホテルの玄関をくぐった。
なんとなく美人局、そんな可能性もあったので、ホテルだけは亮が選んだ。
もっとも、それならそれで構わない、チンピラの一人や二人ならいくらでも相手はできる。
週末の予定が決まっていなかったので、水曜の夜に誰かがかかればいいな、ぐらいの気持ちで誘いの投稿をしておいた。
木曜の朝、新橋に向かう快速の中で携帯を開いたらメールが届いていた。
土曜の夕方に津田沼で会いませんか、何通かメールをやり取りして、話が決まった。
しかし亮はいつも思う。相手の顔も仕事もわからないのに、よく合う気になるもんだと。
それはお前も一緒だろ、そういう声が聞こえてきそうだ。
亮は13歳から50歳ぐらいまでなら相手をする自信がある。
顔? 体形? そんなのどうでもよかった。 穴があれば入れて出せる。
愛や恋ではないのだ、入れて出す。基本はそれだけだ。
なんだけれど、今までうそをつかれたこともひどい女に当たったこともなかった。
まあ、やばそうな相手はなんとなくわかる、商売柄そこらあたりの鼻は効く。
ホテルの部屋に入りカギを掛けたら、泉は飛びついてきた。
外から見てそうだろうと思っていたが胸はむにゅっと柔らかい。
ノーブラなのだ、乳首は何か張っているのか飛び出してはいない。
「ね、触って」
泉はワンピースの裾をまくり上げると、亮の手を取って自分の下半身にひっぱった。
ふつうは導いたというのだろうが、彼女の行いは完全に引っ張り込んだというものだった。
素肌に触れた。
彼女はパンティーをはいていなかった。
ついでに言うと毛の処理もしていた。いわゆるパイパンだった。
指はそこに直接触れた。
「えへ、脱ぐ時間も惜しくて、。私がどんなにしたかったかわかってくれる」
亮は服を脱ぎ捨てると泉をベッドに押し倒した。
予想通りそこはもうあふれていた、亮は泉のワンピースを胸までまくり上げるとそのまま彼女の中に入っていった。
泉は終わった後を丹念に処理している。
「俺出してないのに」
性病のこともあるので、亮は基本的には生ですることはない。だからあふれてくるものもないはずだ。
「だってパンツをはかないから」
「シャワー浴びないの?」
「一緒に住んでる子にばれるから、石鹸のにおいさせてたら」
一緒に住んでる、って男と、聞こうかとしたがやめた。亮には関係のないことだからだ。
「あれ、傷つくなあ、嘘でも誰とって聞いてくんないの?」
「聞こうかと思ったけど、その男がうらやましいから聞きたくない」
「亮さん口がうまい。嫉妬されるのってうれしいな。女の子だよ」
「そうなんだ、じゃあ、聞こうかな、誰と」
泉は笑い出した。
泉は驚いたことに研修医だという。給料は出るが高いものではないらしい。
「だから、大学からの友達と二人で部屋借りてるの」
「そっかあ、じゃあ部屋に行ったら、三人でできるね」
「そうだね、そのうちに、期待しててね」
そんなことがないことは、お互いにわかっている。一夜限り、それが暗黙の了解事項。
ややこしい関係を望むなら、スタビで相手を探したりはしない。
平成 単身赴任 ひぐらし なく @higurashinaku
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