極東聖教会秘匿資料【診療所の悪魔】
【概略】
悪魔憑き被害啓発運動の一環で美深高校に派遣された二名の祓魔師、辰巳真白壱級祓魔師と、犬塚賢吾弐級祓魔師が異変を感じ取ったことにより事件性が発覚する。
美深高校の学区内で診療所を営む
丹村高使は息子の丹村道隆を生贄に邪神ニムロドの復活を目論む。
幼少よりネクロマンシーの儀式に加担させ、幼い魂を擦り減らしていくことで丹村道隆を邪神の器にしようと試みる。
いずれかの時点で悪魔崇拝者と接触し、ニムロド復活に必要な儀式の手順や、最重要危険物に認定されているニムロドの血液を入手した可能性が極めて高いが、詳細は現在も尋問中である。
【備考Ⅰ】
この事件で特別公安辰巳部隊所属の
今回の一件にも深く関与している可能性が極めて高いが、依然行方は不明のままである。
【被害の全容】
特別公安辰巳部隊所属の助祭、以下二名が殉教。
・
・
また丹村高使の息子、丹村道隆もニムロド復活阻止に大きく貢献し死亡
極東聖教会は彼の死と献身的な愛を尊び殉教と認定する。
・丹村道隆 殉教
特別公安職員一名と祓魔師二名が重軽傷を負うも、現在は回復し職務に復帰。
・辰巳政宗 特別公安祭司
・辰巳真白 壱級祓魔師
・犬塚賢吾 弐級祓魔師
【備考Ⅱ】
この事件の最中、丹村道隆の恋人、
橘咲には非凡な歌唄いの素質がある可能性が極めて高い。
現在、聖歌隊にて訓練及び保護観察中である。
†
犬塚と真白は白の墓石内にある書記室で、事件の詳細を一通り語り終えると一礼して書記室を後にした。
二人は何となくそのまま解散する気にもなれず、廊下の奥に設けられた自販機の方へと足を進めた。
「コーヒーでいいか……?」
無言で頷く真白に紙コップのコーヒーを手渡してから、犬塚は自分用のコーヒーを選ぶと、向かい合わせに置かれた一人がけのソファに深々ともたれかかった。
「先輩……」
握った紙コップに口を付けぬまま、真白が小さな声でつぶやいた。
「なんだ……?」
コーヒーを飲みながら紙コップ越しに犬塚が言う。
「わたし達のしてることって……何なんでしょう……?」
「ガキを助けること以外に何がある……?」
真白から目線を逸らして犬塚が言った。
「でも……今回も……この前だって……救う道はあったはずなのに……」
そう言って俯く真白を盗み見て、犬塚は大きく息を吸うと立ち上がってコンクリートに思い切り頭突きをした。
額から血を流す犬塚を見て真白が目を丸くする。
「何してるんですか!? 頭でも打ったんですか!?」
「たった今な……これはケジメだ……俺はガキを守る。そのために利用できるものは何でも利用する……だから……」
「お前も俺のことを利用しろ……!! ガキを救うために……!!」
そう言って犬塚は右手を差し出した。
真白は犬塚の目を見つめた。
無茶苦茶だけど……
この人とわたしが目指してるものは同じだ……
真白は立ち上がると、その手を掴んで言った。
「分かりました。もうお互い遠慮は無しです……!!」
「上等だ……」
二人はそう言ってコーヒーを飲み切ると、どちらからともなく歩き出した。
人知れず一層濃くなる闇の気配に二人はまだ気が付いていなかった。
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