1-15【火急】


 宮部を学校まで送り届けた犬塚と真白はビートルを飛ばしての住所へと向かっていた。

 

「もっと飛ばしてください……!! わたしの予想が正しければ時間がありません……!!」

 

「そう言えば何かに気づいた様子だったな……説明しろよ……」

 

 犬塚はハンドルを握り前を向いたまま真白に尋ねた。

 

「繁華街の火事があった時間、アキラくんは学校にいたはずです。彼に繁華街の放火は不可能です……!! つまり、火事を起こしてる人物はおそらく二人います……!」

 

「犬塚さんの言った言葉で確信しました。男の人が好きな場所ばかりが火事になってる……おそらく悪魔憑きになったのは母親で、自分の気に食わない場所をに燃やさせている可能性が高い……」

 

「筋は通るな……だがそれと時間がないことに何の関係がある?」

 

「アキラくんが火事の現場にいたからです……わざわざ極東聖教会に尻尾を掴ませるような行動を彼が取ったのは、完全に操られているわけじゃなく、まだ意識が残っているからだとしたら……? 学校に来たわたし達に向けた、彼なりのSOSだとしたら……? 宮部くんが言っていたように、アキラくんは必死だったんです……!! 仮面の奥に隠された傷だらけの僕を見つけてくれって……!!」

 

「なるほどな……それがバレれば母親がブチ切れるってわけか……」

 

 そうつぶやく犬塚の、アクセルを踏む足に力が入った。

 


「犬塚先輩……今のはあくまで仮説です……現場では慎重な行動を……!!」

 

「なに悠長なこと言ってる……!? ガキは助けを求めてるんだろうが……!?」

 

 犬塚は真白の方は見ずに低い声で言った。


 

「ガキだけじゃありません……!! 悪魔憑きになった人も、助けを求めてるはずです。釘男の時はやむなく断罪さつがいしましたが、断罪するのは最後の手段です……!!」

 

「ふざけるな……!! 悪魔憑きになった奴を庇う意味がわからねえ……!! 奴らは悪魔憑きになる前から腐ってる……!! ガキを救うことに集中したらどうだ新米……!!」

 



「わたしは新米じゃありません……!! あなたの上官です!! それにわたし達は神の使徒です!! ”汝殺すなかれ” 神の言葉に従うべきです……!!」

 

「神はこうも言ったぞ……”征け。罪人アマレクを聖絶せよ。彼らを絶滅せしめるまで戦え”」


 そう言って犬塚は真白を睨み、吐き捨てるように言った。



「俺は悪魔憑きを赦さねえ……!!」

 

 

 言い返そうと真白が口を開きかけると、車が突然停車した。

 

 見ると大きな屋敷の門柱には”ADATI”と書かれた表札が掛かっている。

 



「話は終わりだ……!! 強烈な魔障の臭いがする……!! どうやら、お前の予想通りになったみたいだぜ……」

 

 真白は唇を噛みしめると顔を上げて言った。

 

「わかりました。突入を許可します……!! ただし……この間のような独断専行は無しですよ……」

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