1-7【繁華街】

 

 その後も犬塚と真白は校内で聞き込みを行ったが有益な情報は得られなかった。

 

 すべての授業が終わり、生徒たちは家へ部活へ、各々の行くべき場所に向かってぞろぞろと歩いていく。

 

 随分と輝きを弱めた四時過ぎの太陽に、吹奏楽部のトランペットの音が重なり合うと、校内にはなんとも形容し難い哀愁が漂ってくる。



 そしてそれは夜の訪れが近いことを意味していた。

 

 長く伸びた影の中に、西日の届かぬ校舎の裏に、すでに暗闇の気配が息づき始めている。

 

 

 宮部はぞろぞろと群れを成す学友達を避けるようにして繁華街の方へと向かって歩いていた。

 

 しかし彼が何処に向かっても気に留める者などいない。


 しかし今の彼にはそれはとても都合が良かった。


 どうしても確認したいことがあるのだ。

 

 宮部は繁華街の入口にたどり着くと、そこから漏れ出る独特の空気に気持ちが怯んだ。


 しかし少年は意を決してアーチをくぐると雑踏の中に紛れ込んでいった。

 


 * 


 

「これだけ探してもまったく情報が出てこないなんて……」

 

 そうつぶやく真白の顔には焦りの色が滲んでいる。

 

「まだ話を聞いてない奴らがいる」

 

 そう言って犬塚は慌てる様子もなく校門へと向かって歩き出した。

 

「ちょっと……!! どこ行くんですか!?」

 

「ああいう奴らが行く場所はゲーセンか河川敷って相場が決まってんだよ!! こっちの方角ならゲーセンだな……」

 

 犬塚は鼻をすんすんと鳴らしてそう言った。

 

 

 

「げっ……!? なんでここが分かったんだよ……!?」


 不良グループのリーダーが引き攣った顔で背後に立った犬塚に言った。 


 UFOキャッチャーのアームに動揺が伝わり、ぬいぐるみが群れの中に還っていく。

 

「バーカ。お前らの考えることはお見通しなんだよ。それより聞きたいことがある。ちょっと面貸せよ」

 

 不良少年たちは口答えもせずにとぼとぼと犬塚の後に従った。

 

 真白の目には、それがまるで子犬を従える親犬のように見えて思わずクスリと笑いがこみ上げるのだった。

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