1-6【飛び火】
真白が言葉を発しようとした瞬間、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
ガラガラと音を立てて教員が入ってきたことに気付き、二人は教室を後にする。
「どうだった?」
セブンスターに火を点けようとする犬塚からタバコを取り上げて真白が答える。
「たしかにユニークな子ではあります。でも魔障虐待を受けている確証はありません。それと校内は禁煙です!」
タバコを恨めしそうに睨みながら犬塚は舌打ちした。
「そっちはどうでしたか? 何か有益な情報は?」
タバコをポケットにしまい、真白が尋ねた。
「何もねぇよ。どいつも健康優良児だ。気になる様子は無かった」
犬塚がそう言って廊下の窓から身を乗り出すと、校舎裏にたむろする数名の生徒の姿があった。
「おっ……さっきの悪ガキどもだ」
それを聞いた真白は一瞬動揺しかけたが、気を取り直して階下に視線を送る。
なるほど、いわゆる不良少年たちの姿がそこにはあった。
成人誌と思しき雑誌を囲んで、どの子も鼻の下を伸ばし興奮した様子でゲラゲラと笑い合っている。
「おい……!! 真っ昼間から授業サボってエロ本読んでんじゃねぇよ!!」
犬塚は少年たちに大声で言った。
すると彼らはびくりと肩を震わせこちらを見上げる。
リーダーらしき少年が何か言い返そうとこちらを睨んだが、視線の先にいたのは見知った教師ではなく、黒いスーツに身を包んだ狂犬だった。
緊張の面持ちのリーダーに仲間の一人が何か囁くと、リーダーは静かに頷き仲間を引き連れて足早にどこかへ去っていった。
「もう……!! 逃げちゃったじゃないですか!」
「いいんだよ!
「それ本当なんですか……? たいへん……!!」
真白は犬塚を探るように目を細めていたが、ふと時計に目をやり大声を出した。
「緊急事態です……!! 急いで下さい……!! 犬塚弐級祓魔師!!」
「は!?」
そう言って駆け出した真白の後を犬塚は理由もわからないまま追いかけた。
「おい……壱級祓魔師殿……一体これはどういうことか説明して頂きたいんだが……?」
「ここのランチタイムセールは大人気なんです!! 二時までには売り切れるそうです。危ういところでした……」
支那蕎麦チャーハンセットを頬張りながら言う真白を睨んで、犬塚は担々麺高菜チャーハンセットをかき込んで言った。
「だいたい悪魔憑きが潜んでるのに呑気に飯食ってる場合かよ……!?」
「その点は心配ないかと思います。今日学校を休んでいる生徒はすでにチェック済みですし、どの家からも魔障反応はありませんでした。そうなると丸待は現在学校にいることになります。キリストも安息日に弟子たちと麦を摘んで食べましたし、わたし達も食べれる時に食べておかないと」
犬塚はそれを聞いてぴくりと眉間に皺を寄せた。
「それに、こういう諺もあります! ”飯食って地固まる”ってやつですよ!」
「別に上手くねぇ……」
その時店の片隅に設置されたテレビから臨時速報が流れてきた。
反射的に二人がテレビに目をやると、どうやらここからそう遠くない繁華街で火事があったようだ。
映像には白昼のネオン街が火事で騒然となっている様が映し出されている。
「また火事ですね……」
「ああ。そうみたいだな……」
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