6.森は生きている/サムイル・マルシャーク
十二月物語、ということもあるんですがね。
ちなみにこれは基本的には戯曲です。
小学館版では「十二月物語」という散文に書き換えられてました。
原題がДвенадцать месяцев/十二ヶ月、なんでまあ正しいですわな。
最初に訳した湯浅さんが意訳したのが日本では知れ渡ってますが。
読みやすいのはまあやっぱり散文の方ですかね。
大みそかに小さな、気まぐれな女王様がマツユキ草を急に欲しがりお触れを出すんですね。「今日持ってきたら金貨~枚」の様な。
で、新年になってもマツユキ草が来ないと年は明けない、まだ12月32日だ、とか言い出す訳ですな。
まあマツユキ草が年末に咲くなんて、それ自体あり得ないんですが、この女王様、両親が早くに亡くなって我が儘ほうだい。
何せ「死刑にせよ(縛り首)」と「釈放せよ(無罪放免)」で短い方でいいわ、と前者にサインするくらいだしな。
↑ みたいのは原文で見てみたいもんだけどさ。
残念ながらロシア語原文の本ってそうそう見つからないんだよなー。
いや、探すと「株式会社日ソ」のとこから買えたりしますがね、Amazonでも日本の古本屋でも見つかりませんで。
……と思ったらテキストあったわ!
http://www.lib.ru/POEZIQ/MARSHAK/p_dwenadcatxmes.txt
普通に自動翻訳できますな。でもありがたいからDLしておこ。
日本で何処カットしたかわかるし。
あ、そーすると↑のとこ、
>либо "казнить", либо "помиловать".
「実行」か「赦免」のどちらかです。
翻訳者と時代によって↑もこうも違うのね。
閑話休題。
そんで探しに行かされるのが、森に住む少女。
名前はないです。ただの「ままむすめ」。
最初っからきっちり出ているヒロインなんだけど、あくまで「老婆」の「むすめ」ではなく「ままむすめ」なんですね。
どういう経緯で彼女達が家族やってるのかわかんないんですが、ともかく三人同居してて、老婆は(姉)娘の方だけかわいがり、継娘の妹の方には何かと働かせるというわけ。
で、おふれの金貨に目がくらみ、マツユキ草を取ってこい、という訳ですな。
んな無理ですがな、ってヒロインが言っても、取ってくるまで帰ってくるなと追い出す始末。
そこで彼女が出会ったのが、一月から十二月の精。
普段から森でせっせと働く彼女を見ていた、特に四月の若者が彼女に惚れ込んでて、一時間だけ欲しい、と頼む訳ですわ。
で、その場に唐突に一月から四月まで季節が変わり、マツユキ草も花開くという。
四月くんは彼女に指輪を渡すんですね。
もし何かあったらこれを氷の穴に投げ込んでおまじないをとなえろと。
ヒロインはそれを取って家に戻って寝てしまい、「あったんかい」とばかりに二人はお城へ持っていくと。
この時に姉娘が指輪を抜き取ってしまうという。
で、そこの様子は? と問われた二人、まあ適当なことを言う訳ですよ。
すると女王様「行きたい、行きましょ」となるわけで。
仕方がないので二人はヒロインを連れ出してその場所に行かせようとするんですな。
そこに女王達が追いついて、ヒロインに何でもあげるから教えなさい、というわけだ。
何もいらない、欲しいのは姉娘がとった指輪だけ、と答えるヒロイン。
女王は返してほしければ~と言うんだけど拒否。
怒った女王は氷の池の方へと投げてしまうんですわ。
で、そこで穴に入ってしまったのでおまじないを唱えると、いきなり天気が掻き乱れ。
そして唐突に冬から春、春から夏、そしてまた秋、冬と来て、その間に女王達は着ていた外套を飛ばしてしまうのね。
一緒に来た大臣とかは逃げてしまって、教師と序盤から出てきたその辺りを警備する兵士、それに老婆と姉娘だけ。
そこに一月の人が出てきて、「何が欲しい?」と聞くと。
女王は帰りたい、教師は「理のもとに戻してほしい」、兵士は「寒いので火の側に」。
で、姉娘は単純に「寒いから外套」と言ってしまったので、二人には犬の毛皮の外套が渡されるんだけど、それを着て喧々諤々やってるうちに本物の犬になってしまったと。
一方ヒロインはこの中で十二ヶ月の精に助けられて、色んな贈り物をしてもらうんだな。綺麗な暖かい服とか馬車とか。
さてそこで犬になった二人が引くそりがやってきてお互いにびっくり。
何だかんだで女王は普段だったら目にとまることもない兵士の言葉を聞いて、はじめて「お願い」するんだな。
そんで皆無事帰っていくという具合。
なお1956年のソ連製アニメーションがYouTubeにありました!
https://www.youtube.com/watch?v=kjqtNOrNnmQ
たぶんこっちで想像するのよりずっと向こうのそれですわ。
継娘の格好とか、こっちの人が描いた挿絵とはまるで違うものになってる。
ソ連が当時気合い入れて作ったであろうアニメーションですのでぜひ。
内容ざっと知ってれば画面と音楽だけで楽しめますぜ。
ちなみにマルシャークについてですが。
例のごとくロシア語版Wikiによると、若い時は
>彼は南へ進軍する赤軍からエカテリノダルへ逃亡し、そこで「ドクター・フリケン」というペンネームで新聞『モーニング・オブ・ザ・サウス』に編集部長兼フルタイムの編集者として協力した [12 ]。彼はそこで詩や反ボリシェヴィキの詩を出版した。1919年に彼は(「ドクター・フリーケン」というペンネームで)40の詩を含む最初の「風刺と警句」集(62ページ)を出版した[12]。ボリシェヴィキに加えて、マルシャクは右派(例えばワシリー・シュルギンや反ユダヤ主義者)を嘲笑した[13] 。
……などの活動をしていた様ですが、
>1934年、第一回ソ連作家会議で児童文学に関する報告を行い[21] 、ソ連作家同盟の理事に選出された。
であり、
>第二級スターリン賞(1942) - ポスターおよび漫画の詩的テキストに対して
第二級スターリン賞 (1946) - おとぎ話劇「十二ヶ月」 (1943)
第二級スターリン賞 (1949) -シェイクスピアのソネットの翻訳に対して
第一級スターリン賞 (1951) - コレクション「子供のための詩」に対して
レーニン賞(1963 年) - 書籍『Selected Lyrics』 (1962 年) および子供向けの書籍: Quiet Tale、Big Pocket、Adventure on the Road、Ugomon、From One to Ten、Wax Blot」、「Who will find the Ring」、「 AからZまでの楽しい旅」
レーニンの2 つの命令(1939 年 1 月 31 日; 1957 年 2 月 11 日)
愛国戦争勲章、第 1 級(1945 年 9 月 23 日)
労働赤旗勲章(1947 年 6 月 11 日)
「詩的な児童文学」と「シリアスな大人の詩」を並行して作ってたようです。
ソ連内では滅茶苦茶評価されて、ロシアとウクライナ内部に沢山「マルシャーク通り」が存在するんだそーだ。
ソ連時代の児童文学を読んでみた! 江戸川ばた散歩 @sanpo-edo
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