そう、うちは『大の』大大大物よ!(2)

「えーっと、早速だけど名前は」

天風星てんぷうせい!天風星 子涵ズハンねん!よろしくよー!」

「声、大きいな」

「中国籍……ていうか、日本語喋れるんだ」

「にぃにが修行するならやれって言われて、やっただけよー」

と頼んだメロンソーダを音をたてながら飲む少年子涵。先程までのクール系な美少年が喋り出すと一気にただのガキンチョになっている。すると蓮佳は子涵が持ってきた少し紙の端が折っている履歴書を見つめていた。

「なぁ、子涵君。もしかして君、日本と中国のハーフ?」

「そうよ。爸爸バーバはで中国人で母亲ウォーチンは日本人ね。あと、三つ上のにぃにと四つ下の妹妹メイメイ弟弟ピーディがいるねん」

「天風星……五人家族……か。なんかどっかで聞いた事があるような…」

と蓮佳が後ろで頭をかいて悩んでるのをよそ目に受李は子涵に質問した。

「んで、なんでここに来たんだ?」

「モチのロン!それは修行のためよ!!」

「修行?」

と子涵は立ち上がるなり自慢気な話が始まった。

「にぃにが言ってたね!「ここあそこで強くなってこい。そしたら、うちと戦えるようになれる」って」

「そのにぃにって奴、結構強いのか。」

「あったり前あるよ!うちの数倍は強いよ」

「どれくらいだよ……」

と子涵の子供っぽい言い方に受李。すると、先程まで後ろで考えてた蓮佳が子涵に詰め寄った。

「そのにぃにって……カシオペア連合に入ってる奴?」

「お、よく分かったな。そだね!にぃにはその凄い人だよ!めちゃくちゃ活躍してるって」

「すー……そうか…」

何かを察したのだろうか。蓮佳はまた後ろを向くなり

「ふざけんじゃねぇよ……クソが…」

と眉を吊り上げた蓮佳は頭を掻き、再び後ろを向いてしまった。

__なんか、蓮佳の背後からやべぇ黒霧が出てきている。

受李はそんな蓮佳を見てはいたが面倒いと飽きて無視し、子涵と色々と話し始めた。学校に町に趣味のゲームの事に家族の事までも……









「ええ!蓮佳、家族に虐められたのか!?」

「ん、まぁ……そんなとこかな……」

受李の家族のこと聞いた途端に子涵はガタン!とカウンターテーブルを叩いて立ち上がった。その頃には飲み干していたメロンソーダとコーヒーは空であったためか、一瞬に宙に浮かんだがそのままの立ち位置に戻った。

「許せないね……。こんないい人を虐めるなんて…天罰にでも当ててほしいね!」

「あ、でも……父さんと妹は関係なく仲良くしてくれるし…。父さんが助けてくれたおかげで居られるわけだし…」

「ほほーん。あのエロゲ好き父さんがか……」

「いや、そこはギャルゲー好き父さんだ。よく覚えとけ」

「…ギャルゲー好き父さん…」

「その通りだ」

と呼び名に納得したのか受李は自慢げに話を続けた。

「ま、その父さんのおかげで蓮佳にも出会えたし、今のゲームが好きなったんだ。そうゆうのは慣れてしまったもんだし」

「んー…。意外とすんなりなんだな」

「そうか?」

「本当、本当」

すると、蓮佳が背中から手招きのサインがひっそりと見えた。

「ん、ちょいと席外すよ。なんか食べたいのとかあるか?」

「フライドポテト」

「あいよ」

受李は子涵から離れて、眉を吊り上げる蓮佳が肘に顎をついていたのだ。すっとぼけるような顔で受李は言った。

「まさか蓮佳のとこに弟子にして欲しいなんて言う馬鹿がいるとはな……」

「ほんとにな…」

「なんだよ、拗ねて。そんなに嫌なのか?弟子取り」

「じゃねぇよ」

と言い、蓮佳はスマホの画像を受李に見せつける。その画像には楕円形のメガネをし、上下紺色のスーツを着たラズベリー色のロング青年の画像だ。

「こいつって……子涵?」

「違う。そいつの兄だ」

「兄……そういえば言ってたね。兄がいるって言ってたね」

「そ」

少し怒り気味の声で蓮佳は言った。

「こいつの名は天風星 紫釉しゆ。うちんとこの問題児だ」

「そんな風には見えないね。なんで問題児なん?」

「例えば……」

蓮佳は興味無さに受李から目を逸らし、腕を組んでため息混じりでこう続けた。

「怪物の内蔵を消毒もせず直接食べるとか」

「……へ?怪……物を?」

受李は一瞬だったが宇宙猫と化した。さらに追い打ちをかけるように蓮佳は続ける。

「あと……小さい怪物の中に強め爆薬入れて、怪物の住処を爆破したり。さらに怪物の肉のフルコースを奢られたって部下に聞いたな。しかも、各国の首相らが集まるところで怪物解体ショーとかも聞いたな。あれよくやれたな。俺だったらチビって即逃げるね」

「……」

あまりの常人越え、あるいは狂人越えであった子涵の兄の汚い武勇伝を聞いた途端にさすがの受李は痛んでしまったのか頭を抱えた。そして、こう言った。

「…親の顔が見たい」

「マジでそれだよ!この前の出張だって腸…?なんか内蔵の細長いバージョンみたいなのを振り回して怪物の群れに突っ走っていったり俺のとこにも来たんだぞ。本当に親の顔が見たいよ!」

「どうなってんのあいつの頭…」

「俺が聞きてぇ…」

と怒り気味の声を荒らげる。フライドポテトから高温の油を取り、皿に盛り付けながら受李は言った。

「そんな話しまくる様子だと、蓮佳も付き合いが長いの?」

「まぁな。監視役としてな」

「ご愁傷さま」

近くの椅子に股をひらいて座りながら蓮佳は続けた。

「んで、そんな面倒い監視役を務めたらな。分かるんだ。くっっそ、ムズいって」

「はぁ……それだけ?」

「俺だって抑えるのに必死だったんだよ。あいつ、少しだけど俺よりも力があるんだよ。だから俺が抑えても、俺ごと行こうとするだよアイツ!!」

「なら、ちゃんと鍛えろバカ。それだから同僚からヒョロキン幹部なんて呼ばれんだよ」

「うるせぇ!んなことは関係ねぇ!」

と煽り散らかす受李と怒鳴り散らす蓮佳。すると

「すまんね!ちぃっと出かけてくるー!」

「「!!」」

二人が振り向くと子涵がなんと靴を履き直していたのだ。二人は早速

「お、おい。フライドポテトどうすんだ」

「うーん……冷めても美味しいだろうし…。とにかく外に行っとくー」

と子涵は自分で蹴破ったドアを踏みながらluckyの外へと出ていった。フライドポテトをカウンターに置き、子涵が飲み干した氷が溶けかけてるメロンソーダを手に取り、受李はため息をつきながら再びキッチンに向かった。

「ったく、なんでどいつもこいつも勝手すぎるんだ…」

「おまいう」

「うるせぇ…」

するとコップをシンクに置く寸前、受李の手が止まった。受李は何かを忘れてるかのように

「なんか……見失っているような…」

と走馬灯のように先程のことを思い出した。

「外に行っとくー」

と言いつつ、子涵がスマホを見ながら行っていたことを思い出した。

「まさか…」

そして、子涵が来る前の蓮佳が話した拉致事件のことが頭に過ぎる。

「!まさか…」

受李はすぐに何故か俯いている蓮佳の肩を揺さぶった。

「おい蓮佳、起きろ。子涵が…」

「紫釉はな……察しも出来ねぇ大バカもんなんだよ……」

「それがどうしたんよ」

受李はハッと蓮佳の顔を見つめてた。なんと蓮佳は何故か泣いていたのだ。しかも謎の嬉し泣き。

「うぅ…まさか、こんな優しい弟がいるとは思わないやん……」

「ほざけ。ほら、とっとと立つ」

「ふぁい…」

受李は無表情のまま蓮佳を立たせ、自分の思うがままに蓮佳を連れ出した。すると

「おや、もう閉店かい?」

「あ、はい……」

「そうなのそれは残念だね…」

と先程店から出た心配してくれた老夫婦と交わし、泣きまくる蓮佳を連れ出した。

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