新しい非日常
そう、うちは『大の』大大大物よ!(1)
「えっと……海賊バス停はどこだ?」
「あれ、ここじゃない……!?」
「どこだよ〜もぅ……」
今年に大型リニューアルオープンしたばっかりの本郷駅の朝はリニューアルされたせいか目的のバス停が見つからなく彷徨っている人とそうではなく駅中で買い物をする人で賑わっていた。
ドスン!
「ぅっ!」
「あ、ごめん!」
それは当然に混んでいるのでぶつかるのはもう当然のことだ。すると大きなカバンを担いでいる少年は
「けっ、なんねん。ちゃんと面と向かって謝るのが礼儀なんのに……」
ぶつかられた人の姿が居なくなった途端に拗ねて小言を吐いた少年。仕方がない。何せ朝の駅中は通勤・通学時間だ。急いでいるのは人によって多々あるのだ。
「ぷー……」と根を張り頬を膨らました少年はジャンパーのポケットの中から紙切れ一枚を取り出す。その紙切れには目的の地図が書かれてた。
「ホンゴウ……ここなんだな……。ローマ字でもHONNGOUって書いてあるしー、えっと徒歩十分……結構長いアルな」
そう、少年の目的地はここ本郷である。ここからは数キロかかる空港と先程乗っていた電車を乗り継いでこちらに来たのだ。そして、紙切れをポケットにしまった少年はことを無かったかのように気持ちを切り替え、鼻息を大きく吐きドヤ顔で前を向いた。
「ここでうちの英雄譚が始まるよ!!」
といい、すぐに目的地へと走り出した。
「……騙し拉致?」
『ああ、そうだ』
カフェ luckyのオーナーからこことは関係ない話が舞い込んできた。
「どうぞ、コーヒーとミルクティーです」
「おお、ありがとう」
「いつもありがとうね〜」
店員兼同居人が老夫婦に注文品を目の前にテーブルに置いた。老夫婦に一礼をし、受李はすぐに電話をしている蓮佳を方を振り返った。当然、蓮佳はまだ電話中であった。
「なんで、俺のとこなん?」
『君の本拠付近で騙し拉致の取引場所らしきのを見たとの報告があった。すぐに調査をしてくれないか?』
「なるほどね……」
そう言い蓮佳はコーヒー缶を開け、スマホを肩において飲んだ。騙し拉致事件。数日前にヨーロッパ各地、ロシアを中心に突如数千人の行方不明者が出てきたのこと。その四、五日後にその数百名の行方不明者が死体として、発見された。
「……確か、ヨーロッパの他にも中国や韓国のとこで行方不明者相次いでいるんだよな」
『その通り。その中でも死者で出ている。この際言うが、多分の僕の推測からすると、君のいる本郷が本拠地だと僕は思う。本郷には石油などを運ぶ港があるからな』
「本拠地か……んで、それを俺が調査しろと……」
『ああ、そうだよ。それにお前、住所僕以外に誰にも公開されてないからな。むしろ、好都合だろ?』
「ぐっ…」
蓮佳は顔を懲らしめる。実は蓮佳は秘密保持のために住所は誰にも明かされてないのである。だから、嫌なとこを付いた顔のようになっているのである。
「というわけだ。さっさとやるようにな」
「あ、ちょ……」
蓮佳の言うのを退いて、通話はここで切れた。
「ん、あ"ぁ〜っ!あの野郎……」
「何?同期から?」
「そだよ」
と蓮佳はスマホを置いて、ひょっこりと覗く受李のほうを振り向いた。
「何かの調査を押し付けられたか…ご愁傷さま」
「は、ご察しのいいガキだな」
「すまんが…テレビを付けてもらえないか?」
「あ、やります」
受李が壁に備え付けてあるテレビのリモコンを押した。テレビが起動すると行方不明者のことが写しだしていた。
『先週から発生している謎の行方不明者の増加。昨日も新たに六人の行方不明者が入っています』
「んまぁ、また……」
「世の中も苦しくなったのぅ…」
「それなー」
老夫婦との何気ない会話をしてた途端に受李が蓮佳がやや険しい顔で見ているのを気づいた。
「まさか……」
「まさかとは思うがその調査って行方不明者のこと?」
「そうですよ。全く、連中が俺らの町で活動してるじゃねーかって」
「へぇ……」
老夫婦が出た後、蓮佳は受李に調査のことについて聞いてきた。受李は無関心の顔をしながらも蓮佳の話に耳を傾けてた。蓮佳は話を続ける。
「ま、あくまで噂なんだよ。噂。風の噂とかよく聞くだろ?それだよ」
「そのあくまでだろ。なんか調べとかしたの?」
「まず、調べがないし、この情報が少ないんだよ。行方不明者とその死体とヨーロッパ各地で起こってるだけなんだよ」
「えー、何その、新聞そのままパクるような言い方は」
「んなもん、俺の同期野郎に言ってやってくれ。そいつ、いつも隠しまくってるからよ。迷惑電話として掛けとけ」
「えー………」
受李が若干引いてた。その時
「たのもー!」
ドカーン!!
「「!!」」
どことなく幼い少年の声と共にluckyのドアが誰かによって蹴破ってきた。その衝撃音に驚き、蓮佳と受李は即座にドアに振り向いた。ドアに付いてた割れた青付きガラスをさらに靴で粉々にしながら、店に入ってきたのは、ドデカイ荷物を持った桃色髪碧眼の少年だ。顔から見てもまさに姫を救う王子役に当てられそうな絶世の美少年である。
「ひゅー………」
これにはイケメンに興味なしの受李も、目を奪われこの昂っている口笛である。これなら、ワンチャン女装しても喉仏除いてバレない程度な美人さんだと蓮佳は金目顔に変わっていた。すると
「おい、そこの女共」
「……へ?」
「俺ら?」
「ん」
美少年が頷き、蓮佳らのところにズカズカと迫ってきた。そして、バン!と大きな音を叩き、紙を見せびらかした。
「ここ、おまんらのアジトで間違いないな?」
「……えー、そうですね。俺らのアジトで間違いないな…」
と蓮佳は美少年が持ってた小さな紙を凝視して、遠ざけてと何度も見つめてた。小さな髪には地図が書かれいた。その地図は間違いなく、蓮佳らが住んでいる住所と一致しているのだ。
「うん。間違いない。ワイらの住所だ」
何度も(ゲームの)マップをよく見る受李も言われ、美少年は何故か俯いていた。そして、ブツブツと
「そうか……そうなのか……ここが……うちの…」
「お、おい……?うお!」
「おい!うちを…」
美少年は期待が入った輝かしい瞳で蓮佳らに向けて勢い満々でこう言った。
「うちを、うちを弟子にしてくれ!!」
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