第16話 ︎︎巡り会う者たち

カールのアークエナジー反応が消えた。

「カールが勝ったようだな。よくやった。相打ちも無理もないか。ルドクと戦う前から何百人も相手してたんだもんな。」

「他人の心配をしている場合か、マックス・マクレガー一等中将。」

「そういうお前は仲間が倒されたんだぞ?心配しないのか?へリオンズの1人、火のアーク使いラーマ・バルシュ。」

ヴィクマン兄弟の師であり恩人マックス・マクレガーとへリオンズの現ナンバー3のラーマ・バルシュが対面した。


「当たり前だ!死ね!炎化大戦斧パラッシュアックス!!」

キレたように怒鳴ったあと、身の丈ほどある炎の斧を出した。

「我々も始めるか。勝利の武零度ヴィクトリアルブレイド!」

同じく身の丈ほどの大きさの大剣をそうのアークで作った。ドライアイスの煙のような、冷たい煙が大剣からモクモクと出ている。


「私がこの剣を抜いたのだ。お前はここで負ける。」

「有り得ぬ!この戦斧は、私の膨大すぎるアークを一点に抑えるために火天様が直々に下さった、世界最高の戦斧だ!」

2人は大きな武器を交え、激しく戦った。


「この国のために、私は全てを捧げるッ!貴様などに邪魔されたくわッ!」

「それはこちらも同じこと。私はあの日誓ったのだ。弟子であり、息子のように思っていた総大将エリックを失い、己の無力を知ったあの日から!負けることはあっていいはずがない!」



「おうおう、みんなごっつ騒がしくしとるやんけ。やんな?嬢ちゃん」

「敵に嬢ちゃんとか言われたくないですね。大将なんですよ?ラージ・パンディットさん。」

マリアは呆れるように言った。


「ナンパしとんのに軽くあしらわんとってえな!w ほんま冷たいのうマリアさんは。殺したるわ。」

「いきなりですね。構いませんよ。受けてたちます。」

「舐められたもんやのう。これでもへリオンズじゃ三本指くらいには入るんやで?」

「こっちもですよ。それよりあなた、地元でイキがるヤンキーみたいになってますよ。」


ラージの眉間にシワがよった。

「あかん、プッチン切れたわ。女だからて容赦はできへんで!天地轟爆ビックバン!」

空に放った爆発は辺りの雨雲を跳ね除け、雨を晴れにしてしまった。


「晴れにしてくれてありがとうございます。ちょうど邪魔だったので、これで心置き無く戦えます。」

「お前さんの断末魔、ガレノス様にも聞かせちゃるわ!」




「すっかり晴れちまったが、カールのルドク・クシャトリア討伐を機に、皆続々とへリオンズを倒しにかかっているのう。」

「はっ。そのようですね。」

「アークエンジェル2人は今どうなっているんじゃ?」

「伊藤響の方は敵殲滅に当たっており、毘奈川渉の方はへリオンズの1人三門帝牙の説得に成功し2人で火天討伐に向かっています。」


水天は側近の言葉に驚きを隠しきれない様子だ。

「なんと、あの三門を?!これは期待できそうじゃ。それより奴はどこなんじゃ?」

「と言いますと、へリオンズ最高戦力バンヒ・シヴァージーですか?」

「あぁ。彼は1番の要注意人物じゃ。」


「彼は開戦から一向に姿を見せず、アークエナジー反応も全くありせん。」

「ば、馬鹿な。彼がこの戦場に来ていないはずがない…!」


水天様の背後に黒い影が忍び寄っていたことに、この時は誰も気付かなかった。




「おい、渉!戦いの手を止めるなんてお前らしくないぞ」

「あぁ。少し嫌な予感がしたんだ。にしても俺と帝牙2人でずっと進みながら戦ってるはずなのになんでこうも減らないんだ。」

「きっと俺の裏切りをあっちが察知して兵士をこっちに集中させてんだろう。そもそもなんで俺たち2人とも高速で移動できるのに使わねえんだよ!」

「あれは2人ともアークエナジーを使いすぎる。ボス戦に残り少ない残機で戦うやつはいないだろ?」


帝牙は少し黙ったあと、口を開いた。

「このまま戦い続けても減っていく一方だ。だから、俺に策がある。」

「…なんだ?」

「お前が10分、いや5分でいい。時間を稼いでくれ。その間に敵にへリオンズが周りにいないか感知もして欲しい。」

「分かった。お前を信じてみる!」


2人はグータッチを交わし、帝牙は両手を握りしめ力を込めるようにうずくまりはじめた。

渉は雑兵を殲滅しながら集中し周囲のアークエナジー反応の感知を始めた。


輝光鏡きこうきょうッ!」

三角錐型の光の部屋が帝牙を囲った。

渉は目を瞑り、感知に集中しながらも戦う手を止めなかった。


「そろそろだろ。もうこっちも限界値かそうなんですけど、」

渉の額には極度の集中によって汗をかいていた。

「そろそろだ!待て!」

辛抱強く渉は合図を待っている。


「ぐっ!」

背後の兵に気づかずに剣で刺されてしまった。

「ざけんな、この野郎!」

兵士は渉の形相に怯えなにもできずにやられてしまった。渉は冷静に刺さった剣を引っこ抜いた。


渉の息が荒くなっている。

「まだか、帝牙!」

「今だ!傀儡雷操シグナルリライト!」

アークを込め放たれ、両手を広げた帝牙の周囲十数キロの敵兵が一気に白目を向いて倒れた。


「これは…電気信号を一人一人に送ってショートさせたのか…?」

帝牙は息を荒らげながら言った。

「そういうこと。正確には脳に電気信号の供給量を越える電気を送って気絶させた。自分と大きな戦力差があって、かつ集中するのに時間がいるのが条件だ。それよりお前疲れすぎだろw」

「当たり前だ。この戦場の隅から隅までどこにどんなやつがいるかも感知したからな。おかげでどこに主力たちがいて戦況がどうなのかも分かった。」


帝牙は驚きが隠しきれていない。

「クッパ城の位置がわかったのはでかいが、なんでそこまでしたんだ?」

「嫌な予感の正体が分かった。圧倒的に強くて、それでいて気配が全く無いあいつ…。」


「それはきっと、バンヒ・シヴァージーだ。星天に限りなく近いイグニス帝国最高戦力。その存在を知るものは、イグニス帝国最高幹部のみ。」

「極秘事項なのか? 水天様が知るはずがないじゃねえか!」

「まさか…。ヤツはどこにいるんだ?」


「水天様の、すぐ後ろだよ」


その時、果てしなく大きなアークエナジー反応が戦場に響き、そこにいた全ての兵士が振り向いた。

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アークの涙 @Usuta96

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