第15話 ︎︎されど海の蒼さを知る
カールは目を開けると、そこには真っ白な空間にエリックが立っていた。
「久しぶりだな、カール。」
「あ、兄貴…!」
カールは泣き出した。
「あれ、変だな。もう泣かないって決めたのに。」
「いいんだよ、泣いて。」
泣いている姿は見せたくないカールは必死に目を擦ったが、涙は止まらない。
「なんで死んだんだよ!あの時俺と約束したじゃんか!!もう壁を作って遠ざかるのは辞めたって思ってたのに!!!」
「すまない。でも俺にとって、どんな約束やなによりも…お前が大事だったんだ。」
「俺、兄貴が死んだから、必死になって穴を埋めようとして、それでもやっぱダメで…俺、一生懸命、精一杯やったんだけど、でも!」
「いいんだ。あの夜、お前のままでいいって言ったろ?無理して何者かにならなくていい。でも、最後に一つだけ、弟のお前にしかできないことを頼みたい。」
泣き目を擦る手を止めて話を聞いた。
「…それってなに?」
「俺を、殺してほしい。カール、お前にしかできないんだ。」
「でも、それもできなかったよ。ごめん。」
「いやまだだよ。まだお前はこっちに来ちゃダメだ。」
「どういうこと?」
「手を見てみろ。切られてない方の」
左手を開いてみると、そこにはエリックのドッグタグがあった。
「それを作るのに苦労したんだよ。俺じゃあ、なし得ないことも、それをお前が使えば…。」
「これは…なに?」
「それはクラソル。人の思いを後世に伝えるための道具だよ。俺の全てはそこに入れて置いた。」
「…まさか」
「あぁ。俺のアークライトはそこに入れてある。一族が代々受け継いできた氷のアークは、最初から俺よりお前が持つべきだったんだ。」
「分かったよ。俺、もう一度やってみる。今度こそ壁をよじ登ってみせるよ。」
「あぁ、一緒にな。」
カールは再び静かに目を開けた。横たわるカールの目の前には兄とその奥にルドクがいた。
「おいクソ野郎。第2ラウンドだ。」
カールは立ち上がった。
「お前、確実に殺したはずだ。なのになぜだ!なぜ生きている!」
ルドクはかなり動揺している。
「それだけじゃないぜ?俺にはこれがある。」
首にかかったカールとエリック2つのドッグタグを握った。
「ただの形見が何になるというのだ。そんなもので何ができる!」
「お前を殺せる。」
「
手を前に出して大きく美しい鷲を飛ばしてエリックを攻撃した。
「なんだその氷は!!不快だ!やれ!!」
エリックは
カールが大きく飛んで一気に距離を詰めた。
「
氷で巨大な拳を作りエリックを殴った。エリックは遠くに飛び、最初に作ったカールの雪の壁にぶつかった。
「倒れろ!
大きなつららを無数に作って飛ばした。
エリックは
「我が聖なる炎剣…構わぬ。殺すのならばな」
「
「やったか?」
カールに当たったが、体がガラスのように粉々になった。
「これは、氷の分身か!?」
ピラミッドの後ろからカールが現れ、氷の剣でルドクに迫った。
エリックが剣撃を
「切り落とされた腕と盾を氷で作ったのか」
ルドクは玉座を回転させて後ろを向いた。
「お前の作品よりいい彫刻だろ?」
「
巨大なハンマーを作りエリックを叩くが、同じハンマーを作り相殺した。衝撃波が氷上に響き、2人の距離はその衝撃で離れた。衝撃波でピラミッドと氷の大地の炎が揺れた。
衝撃で飛ばされている時、カールは結晶型の盾を投げる。エリックの胸に命中した。
「やっぱり空中じゃ身動き取れないよな」
2人は着地し、同時に技を繰り出した。
エリックはハイエナを大量に出してカールに飛びかかる。
「
鷲を作り出してカールは飛び乗り、エリックの方へ迫る。
「
鷲が羽根を飛ばし氷のハイエナを砕いた。
「
カールが再び盾と剣を作る。そして飛び乗った鷲で一気に距離を詰め、剣を振るった。
エリックの槍術とカールの剣術が激しく交わった。近接戦闘での戦力はまさに拮抗している。
「昔こうして鍛錬した日々を思い出すなぁ!」
叫びながらも、剣を振るう手は一切止めない。
「やかましいッ!やれッ!」
エリックが
「執拗いッ!早く終わりにしろ!」
「俺もそう思ってたさ。終わりにしよう。」
「
大きな弓矢を作り出した。
「これで最後だ!」
「死にやがれ!クズが!!」
2人が叫ぶと、カールは矢を放ちエリックは槍を飛ばした。
2人の矢と槍はぶつかり合った。矢は槍を貫き、矢は槍先の炎を纏って炎の矢となり、エリックとルドクの2人を貫いた。
エリックは倒れ込んだ。
「あ、り、が、と、う」と口パクのように囁いたように見えた。そのまま死体は消えた。
「ば、馬鹿な…。この私が…死ぬはずがない!」
玉座から立ち、胸に貫かれた部分を抑えるが炎が消えない。
「お前は不幸にも自分の炎で自滅する。だが、死にはしない。お前は死にも値しない。生きて地獄を見るんだな。」
「嘘だ…そ、そんな……。」
そのまま玉座の元から倒れ、ピラミッドから堕ちた。
「ざまぁねえな…。ようやく終わったぞ、兄貴。やばい、俺ももう…アークも体力もない…。」
そのままカールは膝からゆっくり倒れた。良い夢を見ているかのように、満面の笑みだった。
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