狼の恩返し

白猫

第1話

朝。

スマホのアラーム音で目が覚める。

時計を見ると針はちょうど六時を指していた。


「ふわぁ…ねっむ……」


疲れが取れきれていないのか体が重い。頭もモヤがかかった感じだ。

とはいえ、仕事に行かないわけにはいかないので、適当に朝食を用意する。

食パンを焼こうとしたが、焼くのが面倒になったので生のまま口に入れる。特に美味しい訳でもないが、まぁ少しの腹の満たしにはなるだろう。

なんと無しにテレビを付けるとキャスターが今日の星座占いをやっていた。


「ふ〜ん…新しい出会いねぇ……」


俺の星座の占いは「新しい出会いがあるかも!?」だそうだ。

そんな事言われてもなぁ…ぶっちゃけ仕事が忙しくて他人に構ってる暇など無い。


「ま、そんなん出来る訳無いけどな」


と、心のなかで自嘲気味に笑っていると、インターホンがなった。

こんな朝早くに誰だろうか。

何か頼んだ覚えはないし、誰か来る予定もない。

新手の勧誘か何かだろうと勝手に決めつけながら玄関ドアを開けると、

一人の女性が立っていた。


「………?」


誰ぇ…?

思考が一瞬フリーズする。

俺がただ忘れてるだけだろうか?いや、そもそも学生時代に仲良くした女子などいない。少なくともそんな記憶はない。

じゃあほんとに誰…?

俺がその場で硬直していると、その女性が口を開いた。


「初めまして、驚かしてしまってすみません。私、大狼と言います。」

「え…?あ、あぁ…これはどうも……」


その女性…大狼さんの声で意識が脳から視覚へと移る。

見てみると大狼さんは整った顔立ちだった。髪も綺麗な白色でそれなりに長い。

たが、それと同時におかしな部分がある。

何故か彼女は獣のような耳と尻尾をもっている。

どういうことだろうか?コスプレ?なんで?

俺が再び混乱していると彼女からさらに俺を混乱させる事を言った。


「今日はあなたに恩返しをしに来ました!」

「…はい?」

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狼の恩返し 白猫 @sironekokuroneko

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