第三十七話 狂気と切ない想いと
「王族の首と大妖ハデスの遺物を差し出せ」
それが“ラの国”の第三皇女、ニジャール・ラ・フンデルの要求だった。
――――宮殿の
ドカドカと荒々しい足音がひびき、侍女たちは品のない足音に眉を
「オトワニ様はいずこか? ワルレーが火急の用事でお尋ねしたと取り次げ」
いささか余裕のない
「何事です?! 今、乙姫さまは“フェリーチェの儀”に備えていらっしゃる――不敬ですよ」
乙姫の侍女と『お
「火急……と言うておる、が? おのれらは立場と言葉の意味がわからんか?」
気だるげに首元をなぜると
「カトー、邪魔する者は
「承知」
カトー大佐は八の字に眉を
左手で
「やめなさいっ、何事です!」
すぅっと
「火急にして深刻な話です。人払いをお願いしたい」
とワルレー軍卿の顔に
――――乙姫の自室にて。
「
ことの次第を聞いていたオトワニの顔色が見る見る蒼白に変わっていく。
「なんと……なんと理不尽な。
ワルレー軍卿、引き金を引いたのはあなたです。私がどれほど苦労して“ラの国”をいなしてきたか。
国の興隆などは十年、二十年の時を経て移ろうものです。それを見極めもせずに……「くだらんっ!」な?!」
「くだらぬ、と申し上げた。“ラの国”は遅かれ早かれ侵略するつもりだった。
理由は三つ。
一つは二年前、シズ姫の
一つは監視官の固定。長期にわたって“アの国”の人、物、金の流れを
最後は年六度の
鼻から侵略ありきだった――」
「だとしても大妖ハデスを復活させては味方もやられてしまいます。アレは敵味方の区別はできない」
「その損失は“常世の国”から強奪する。“渡来人”は我らの何倍も波動が強い、
お分かりですな、と乙姫の目を
これは狂気の目だ。
「もはや
でなければ――ハハッと
「我らはあなたとシズ姫の首を差し出さねばならなくなる。敗軍の将として処分される前に、ね。
死にたくなければハデスを復活させろ」
――――シズ姫は。
そんなことなどつゆ知らず、あの日やってきた少年の姿を思い出しながら“フェリーチェの儀”で使う
『国中の
驚くほど純粋な心を“外魂の玉”を作るごとに人の命が奪われていく外法で心をすり減らせていた。
そんな時、出会った少年は『
『辛かったであろ』と傷ついた心を
切ない想いを抱えた十五歳の少女は、イソイソと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます