第六話 いざ竜宮城へ

 紅珊瑚べにさんごに釣られたクロウ(義経)さん。


「三百貫もあれば、兵を起こせるのお」

 

 浦島太郎さんの現物げんぶつアタックに、七郎(弁慶)も一緒になって相好そうごうくずしている。


 だがその前に聞きそびれた疑問意義あり!

 

「そもそも浦島太郎さんって七百年も前の人だったんじゃない? 日本書紀にも出てくるくらいだし。

 時代の辻褄つじつまが合わないじゃないか?」


「誤解です。ご指摘してきは“浦島子うらしまこ”伝説の話にございます。

 私が戻った時のへだたりは十五、六年ほど。

 昔のおなごはすでに人妻過去の人となり、両親も亡くなっておりました。

 悲嘆にくれる私を不審ふしんに思い近づいてきた人に、身の上ばなしをしたところ『これは伝説の“浦島子うらしまこ”じゃ、いや浦島子うらしまこの太郎さん、浦島太郎じゃ』と言われ、いつのまにか名前がすり替わっておりました」


 うん、娯楽の少なかったこの時代。

『伝説は本当だった?!』

 と噂話スキャンダルがあっという間に広がって、伝説をゆがめてしまった?


 だがもう一つ。なんで源氏非主流派

 しかも、なんの兵力も持たない少年と、怪しげな僧兵に?

 

 それを聞くと

「ほかの源氏は表立って動けませぬ。(今世の武家の主流)平家では銭(請負うけおい金)があいませんから」

 だって……。

 うーん、世知辛せちがらいわぁ。


「ところで太郎さん、竜宮城へはいかに行くのかの?」

 と、クロウ(義経)さん。


「あ――ちょっと待ってっ、ちょっと」

 慌てて行く流れになったのを押し留めた。

 

 ううんっ、うんっ、とオレが憑依ひょういしているのを誤魔化ごまかしながら、

「まさかオレたちだけじゃないよね?」

 オレと七郎(弁慶)さんを指しながら聞いてみる。


「もちろんでございます。いかなワルレー軍卿に幽閉されたとはいえ、乙姫は女王。女王に味方する軍勢はおりまする」


「どれくらい?」

 と聞いたオレに太郎さんは。


「……」


 把握はあくしてないんかいっ?!

 はぁぁぁ……


 今回の依頼ミッションは幽閉されている乙姫と、その娘のシズを救出する事。

 B級映画じゃあるまいし、いよいよ不安になってくるんだけど。

 

 クロウ(義経)さんは、呑気に両手を頭の後ろで組んで笑ってる。

「冒険じゃな……現地で兵をつのるしかないのぉ」


 ワクワクした声で、

「要はやるかやらぬかじゃ」

 と言い出す始末。


大願成就平家打倒には元手もとでが要りますゆえに」

 とこれまた現金な七郎(弁慶)さん。


「と、ともかく、行くけど救出するかどうかは現地で判断する。それで良いよね?」

 と釘を刺すと、太郎さんはうなずいた。


「さればご案内いたしましょう」

 とこの機を逃すまいと、さあさあと追い立てられるように案内された庭へついて行く。


「こちらへ」

 と手招てまねきする先には巨大な岩が。

 周囲を紙垂しでを垂らしたしめ縄でくくってある。


 なんとも言えない面持ちで見ていると、太郎さんがパンパンッと二回柏手を打った。

 するとその巨岩から丸太のような手足が生えて、巨大な頭まで生えてくるじゃないですか?


「亀……?!」


 これって陸亀じゃないの?

 困惑しかない――のっそりとこちらを見る亀と目が合った。

 

「乙姫の手の者でございます」


 嬉しそうに説明してくれる太郎さん。

 どうしろって言うんだ?


 七郎(弁慶)とオレが固まっていると、

「離れ離れになるといけません。さ、手をとって」

 と差し出す手を取ると七郎(弁慶)の手も反対の手で握る。


「よろしいか? 行きますぞ」

 と声がかかると、亀の甲羅が輝き始めた。


「え?! 海亀の背に乗って行くんじゃないの?」

 オレの当然の抗議に太郎さんは「アレは作り話ですから」なんて言ってる。


 そんな事ぶっちゃけていいのか?! 激しく抗議しようと口を開きかけた時、甲羅がピカリと。


「「うわぁぁっ」」


 目の前の風景がグニャリとゆがんだ。


明日も7.00に投稿します。宜しくお願いします🙇‍♀️🙇‍♀️

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