第三話 伝説との出会い
遠くから森を駆け抜ける風の音が聞こえ、近くからは行商人らしき一団の、
太陽が天中に登り、朝方の冷え込みはどこへやら。
少し肌寒いくらいの心地よい陽気だ。
関所を越えて安堵したなのからなのか、
どこそこの
ここは若狭の国(現代の福井県)と京の都を結ぶ通称“
現代では国道何号線だったかと思うのだが、さして興味がなかったから知らない。
春の霞も昼にはキレイに晴れ、夕時に差しかかると“
“
「さて、街に入ったら宿をとるか?」
七郎(弁慶)へ声をかけると、すでに準備はござるからそちらへ、と宿坊からの返事なのか紙っピラを見せて来た。
返信元を見ると『真宗・妙光寺』とある。
「また精進料理かよぉ」
不満げに頬を
「せっかくの“
と
なにせ育ち盛りの十五歳だ。
気持ちはわからなくもないが『源義経』が、急に人間臭く思えた。
「明日には
と小声で叱ってくる。
「美味い飯と女子の柔肌に、日々の憂さを晴そうと思っておったと言うのに……」
それも叶わぬかよ――とこの間までガキだったやつがなに言ってんの? と思う愚痴をこぼしていた。
モテていたとは伝わっていたが、もう十五で
まぁそれも現代人の、しかもボッチなオレの感覚なんだろうけどさ。
「
七郎(弁慶)はギョロリとオレを睨み、スタスタと先を歩いていく。
「硬いヤツじゃのぉ」
聞こえよがしに嫌味を言いながらスゥと早歩きで七郎(弁慶)を追い越した。
「
あわてて七郎(弁慶)も追い縋ってくる。
鞍馬寺に毎日押しかけて来て『修行でござる』と稽古をつけてくれた
もっとも鴉天狗に身をやつした源氏の郎党だったのだが。
「男子の胆どころか足腰も萎えたか?」
とせせら笑うオレに
「ならば荷物を拙者に全て預けているのは、いかがなものかと存じますがなっ」
と腹立たしげに追い越していく。
そんな有り様だから、予定より
◇◇◇
美味くもない夕食をとり、一晩泊まった翌日の昼。
「
平伏する老人に、だれなんだよ? と固まっている。
粗末な身なりだが一つ一つの動作に隙がなく、品さえ感じる。
そのままその目線を七郎へ向けると『拙者も詳しくは……』とおぼつかない。
その目線に気づいたのか、ご老人はニコニコと面を上げた。
「おう、ご不審も
と改めて居住いを正す。
「普段は通称で通しておりますゆえに。私めが通称“浦島子”……浦島太郎でございます」
と
「「浦島太郎?!」」
七郎(弁慶)もオレ(源義経)ものけぞったのは仕方のないことだろう。
ここまでご覧頂きありがとうございます。もし面白いと思っていただけたらレビューにお星さまをください!
泣いて喜びます🥲
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