第7話 おまけ話 かのん プールデートへの道のり

「もっちゃん。夏のイベントは逃しちゃったけど、これからは、一緒に色んなとこ行って、恋人らしいイベントたくさんこなそうね?」

「あ、ああ…。そうだな。かのん。」


付き合い始めたばかりの、幼馴染みの花音にそう言われ、夏休み中に彼女からもらったメールを思い出す元春。


『ねえ。そろそろ、私に会いたくなってきたでしょ?ダイエットなんかやめたら?

元春が謝って来るなら、仲直りしてあげてもいいんだよ?

花火大会とか、海とか、夏は楽しい事がいっぱいだしさぁ…。』


(あの時は、俺も意地になっていたし、煽りのメールにしか思えんかったけど、あれって、ホントは一緒に花火大会とか海に一緒に行きたかったって事だったのか?)


「なぁ。かのん。花火大会とか海とかはもう厳しいかもしれないけど、

A市のスポーツ施設内のプール、9月末までやってるってさ。もし、行きたかったら一緒にいく…か?」


「えっ!✨✨(こ、これは…!もっちゃんからデートのお誘い!?しかも、プール!)い、行く!!絶対行く!!」


元春の提案に目を輝かせて飛び付く花音。


「おう。じゃあ、来週の週末とかどうだ?」


「うん。来週末ね?わあぃ!新しい水着がやっと下ろせる…ハッ!!||||(夏休みで痩せて胸がなくなっちゃったから、水着のサイズ合わなくなっちゃったかも!)」


喜んでいた花音だが、途中で重大な事に気付き、青ざめて口元を押さえた。


「も、もっちゃん。誘ってくれて嬉しいんだけど、実は、占いで今月の第三週まで私、水難の相が出てて…。」


「あれ?そうなのか?(かのん、占いとか気にする方だったっけ?)じゃあ、プールはやめとくか?」


「あっ、ううん!第四週からは、水難の相は消えて、寧ろ、プールが大ラッキースポットになってて…!だから第四週の週末に行く事にしたらどうかなぁ?」


「そ、そうなんだ?占い極端だなぁ。じゃあ、◯日の土曜日にでも行くか?」

「うんっ!!プール楽しみ♪」


必死に第四週以降プールに行く事を主張してくる花音に、元春は戸惑いながらも、ともかくも9月下旬の週末にプールデートすることが決まったのだった。


❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇

 

「というわけで、今月中に何とか、この水着に合うように胸の目方を増やしたいのぉ!

うわあぁん!かんりさあぁん…!助けてえぇ!!」


「あのねぇ。元春もかのんちゃんも、私の事◯ラえもんか何かだと思ってない?頼れば何でもできるわけじゃないのよ?」


花音に電話で呼び出され、泣きつかれ、呆れたようにため息をつく元春の姉、突張栞李。


「「そんなのは、自分でなんとかしなさい!」と言いたいとこだけど、弟の事では迷惑かけたし、かのんちゃんは、将来義妹になるかもしれない子だもんね。


しょうがない!絶対できるとは言わないけど、できるだけの事はしましょう!」


「うわぁい!ありがとう、かんりさん!!」


ウインクをして微笑む栞李に、花音は目を潤ませて手を擦り合わせるようにして礼を言った。


「要は、元の体形に戻ればいいのよね?体重を無理なく増やすように、栄養をとって、できるだけ胸にお肉がつくようにしていきましょうか?」


「ハイッ!お願いします!」


          *

          *

それからというもの、栞李と共に逆ダイエットに励む、花音。


「スタイルよく太るには、無酸素運動が効果的よ!!スクワットに腕立て!」

「ふんっ!ふんっ!」


「バランスよく栄養をとって、高タンパクの食品をとるように心がけてね?私のオススメオヤツはアボカドとチーズだよ?」

「あっ…。うまっ♡」


「あとは…、消化がよくなるようにストレスを軽減することと、睡眠をきちんと取ることかしら…?」

「ああ、もっちゃんからシャツを貸してもらってるから、それは大丈夫!

ご飯の前に嗅げば、食欲増進するし、寝る前に嗅げば、朝まで安眠できるし、もっちゃんのシャツの効果は万能です!!」


「あのひどい匂いを嗅いで、どうして食欲が出たり、安眠できたりするのかしら?愛って恐ろしいわね…?||||||||」


にっこり親指を立てる花音に、栞李は青褪めるのだった。


         *

         *


そして、9月四週目のプールデートの当日。


「もっちゃん、ごめん。待った?」

「いや、そんなには…って、花音!?だ、大分大人っぽい水着だな?//」


更衣室近くの待ち合わせ場所にやって来た花音は、ピンクのビキニ姿で、元春は目を見開いた。


「似合わない?」

「いや、似合ってるけど…///(去年までは、胸ペッタンコのワンピース水着だったのに…。変われば変わるもんだな…。)」


やや、小ぶりながらも、胸の谷間ができており、幼馴染みの成長ぶりに、思わず目が吸い寄せられてしまう元春。


「ふふっ。ならよかった✨✨」


元春の視線を感じて、ほくそ笑む花音。


(もっちゃん、見てる見てる!//あれから、体重も戻ったし、胸は以前よりふっくらしたし、逆ダイエットをプロデュースしてくれたかんりさんにはホント感謝だわ〜。後でお礼しよっ。)」


「いや〜、俺なんか、痩せた筈なのに、また太ってしまったみたいで去年の水着が、意外とぴったりでさ。カッコイイ姿見せられなくてごめんな。」


「あ、う、ううん。そんな!(もっちゃんの体重が戻るように毎日大量の唐揚げ弁当食べさせていたなんて言えないっ…|||||||)

もっちゃんはいつでもカッコイイよ?プール行こっ?」

「お、おう。」


花音は、また太めになりつつある元春の腕を取り、プールへと向かったのだった。


          *

          *


「あ〜極楽極楽♡人間イカダ〜。流石、もっちゃん。強大な浮力〜↑。」

「おい。かのん。俺の上に乗らないで、自分で浮かべよ!」


仰向けにプールに浮かんでいた自分の上に乗って寛いでいる花音に文句を言う元春。


「え〜。だって、私、泳げないんだもん。」

「ここ、足つくだろが!」


「うっ。でも、こうやって密着してた方が恋人っぽいじゃん。」

「こんなん恋人ってより、親子だろ!周りの視線を見てみろよ?」

「へ?」


「うわ、スゲー!あの子、お父さんに人間イカダしてもらってる!」

「いいなぁ…。お父さ〜ん。私もアレやって〜?」


プールはそこそこ混んでいて、家族で遊びに来ている人も多く、人間イカダをしている元春と花音は親子に見られ、子供達に羨ましがられていた。


「ううっ。私、お父さんに連れられたちびっ子みたいに思われてる??」


ショックを受けて、涙目になる花音。


「い、いいもん。周りからはどう見られようと、恋人として、イチャイチャしてやる〜っっ。」

「うわっ花音?!」

フニュン!


「〰〰っ!!///コラ、かのん!ヤバいって…!!」


ヤケになった花音に抱き着かれ、体に去年まではなかった胸の膨らみを押し当てられ、思わず反応しそうになり、元春が焦っていると…。


ドボン!ドボン!ドボン!

ドバシャン!


「きゃあっ!!」

「うわぁっ!?」


突然近くで4つの大きな水しぶきをあげて、巨大な生き物達が水の中に飛び込み、それにより生じた急流に押し流された周りの人が悲鳴を上げていた。


「うむ。水温は少しぬるめだが、気持ちがいいな?ハハハッ!たまにはこういうところに来るのもいいもんだな。佐藤、鈴木、小林よっ!」

「「「本当にそうですねっ。須毛先輩っ!」」」


「げっ!!須毛先輩と…」

「相撲部員の人達…?!」


思わぬ顔を発見して、目を丸くする元春と花音。


「(ちっ。見つかったら面倒だ!この場を離れるぞ、かのん!)」

「(あっ。う、うん。分かった!)」


ヒソヒソ話を交わすと、二人はそろりそろりとプールから立ち去って行った。



その後ろ姿をチラッと見見られ、須毛先輩と相撲部員佐藤、鈴木、小林と次のような会話がされていた事を元春は知らなかった。


「うん?」

「どうしたんですか?須毛先輩?」


「いや、今、プールから上がって行った巨漢の男と、ツインテールの女子が、突張とかのんちゅわんに似ていた気がしたんだが…。」

「突張?あいつなら、痩せてスレンダーになってませんでした?巨漢の男なら違うんじゃないですか?」


「そうだよな。かのんちゅわんが浮気するわけもないし、二人共俺の見間違いだな。きっと…。」

「でも、あいつ痩せるのも急だったし、急に太ったとしてもおかしくはないですけどね?」


「ハハッ。そんな事があろうものなら、今度こそ、俺はあいつを相撲部に引き入れてやるよ。」

「「「ハハッ。いいですね!今度こそ、奴に相撲の素晴らしさを教えてやりましょう!!」」」


          *


「うっ。寒気が…!」

「もっちゃん、大丈夫?かき氷食べ過ぎた?」


その後、飲食スペースでかき氷を食べていた元春は、須毛先輩達の圧を感知してか、身を縮め、隣で同じ様にかき氷を食べていた花音に心配されていた。


「いや、大丈夫。それより、ラッシュガードの前、ちゃんと閉めとけよ?須毛先輩達に花音のそんな姿、見せたくねーし。」

「あっ…。う、うん。//(もっちゃん、それは独占欲って奴かな?ドキドキ…♡)」


逆に元春に心配され、嬉しそうな花音。ラッシュガードのチャックを上に上げると、元春のラッシュガードのチャックにも手をかける。


「わっ。何だよ、花音。//」

「いや、もっちゃんも、他の女の子に体を見せて、惚れさせたら、心配だと思って…。」


真剣に主張する花音に苦笑いする元春。


「痩せてた時ならともかく、この体型で、寄ってくる女子はかのんぐらいだろ?」

「もっちゃん…。やっぱり、痩せていた時の方がが、よかった…?」


「い、いや、そんな事ねーよ。花音がいてくれるならそれで充分だよ。」

「もっちゃん…。」


そう言いながらも、どことなく残念がっているような元春の様子に、花音は、栞李から言われた事を思い出す。


✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

『元春、最近リバウンドしてきちゃってるみたいなんだよね。夏休みに元春がやってたダイエットの計画と記録をまとめたノート、かのんちゃんにも渡して置くから、必要だったら、あいつのダイエット付き合ってやって?頼んだよ?』

『あっ。は、はい…||||||||』


他の女子を寄せ付けなくする為、弁当のせいでリバウンドさせたとは言えず、栞李からノートを受け取りつつ、花音は引き攣った笑いを浮かべた。

✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


(もっちゃんが望むのなら、痩せた体型に戻してあげた方がいいのかな?

他の女子にモテても、浮気しないぐらい、私との間に強い絆を作ってからなら…。)


「かのん…?」


難しい顔をして考え込んでいたかのんは、やがて、一つの結論を出した。


「もっちゃん!今すぐ私と夫婦になろう!!」

「ぶっ!ゴホゴホッ!な、何言ってんだ、お前は…?!ゲホゲホッ!」


花音の爆弾発言に、元春はかき氷を気管に入れて、むせ返ってしまったのだった。





*あとがき*


もっちゃんとかのんちゃんのその後のおまけ話でした…。

この話をもって、完結とさせて頂きます。


最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました✨😊✨


なお、かのんちゃんの水着姿のイラストを近況ノートにて投稿していますので、よければご覧下さいね。


今後は、「許嫁=」「紅糸島」をマイペースに投稿していきたいと思っています。


ご興味ある方がいらっしゃいましたら、今後もどうかよろしくお願いしますm(__)m














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夏休みに20kg痩せたら、散々俺をからかっていた幼馴染みが絶望して相撲部に特攻した 東音 @koba-koba

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