ビデオテープ

@Katabo

テープ

ふと家の中を整理してたら、一本のビデオテープを見つけた。


題名欄は白いまま何も書かれていない。


私は、家の奥底にしまってあったビデオデッキを取り出し再生してみることにした。



まず映ったのは、眼鏡販売店のCMだった。


軽快なBGMをバックに店内と思われる写真などの静止画を映しながら、機械音声のようなナレーションで「メガネの珍…堂ではキャンペーン実施中。皆様のご来客をお待ちしています。」


ところどころ画面がチラついたて見えなかったり音声が飛んだりして聞こえない箇所があるが、私は昔あった店を思い出していた。


「昔あったよな・・。あれのせいでなくなったんだっけ。」


「メ・ガ・ネ・の・珍・…・堂♪」


と軽快なフーズでCMは終わった。


「一見すると何一つ特徴のない一軒家・・・」


次に映し出されたのは、建物を映し出しながら男性のナレーションでそれを紹介する番組だった。


右下に番組名と思われるテロップが表示され、やや感傷的な曲を流しながら内容を紹介している。


「この番組はご覧のスポンサーでお送りします」


女性のナレーションが聞こえ、スポンサーと思われるハウスメーカーのロゴが表示される。


画面はカメラが来客の目線に合わせて玄関のドアに近づく。そして家主と思われる人物がドアを開け、扉を開けて挨拶をしようとした瞬間…


ポーン!ポーン!


「緊急地震速報です。強い揺れに警戒してください。」


ナレーションを遮り、切迫した警告音と機械音声でこう伝える。画面下半分は赤地に白抜き文字で「緊急地震速報(気象庁発表)」と左に関東地方の真ん中に赤いバツ印の地図と青地に黄文字で「東京都で地震 強い揺れに警戒してください」と白抜き文字で「東京」が表示される。


警告音とアナウンスを2回繰り返した後、通常の番組に戻る。


しかし戻ったものの、ところどころ音声や画面がとぎれとぎれ聞こえづらく何言っているのか聞こえない。おそらくだが録画中にビデオデッキも地震で揺れているのだろう。


ほどなくして、機械がぶつかり合っていると思われる激しい音と揺れている無人のニューススタジオが映し出される。十数秒後、ポーという音とともにカラーバーに移りそのまま黒い画面になってしまった。


数秒後、通常の番組に戻り、家主がカメラに向かって話している。上部では「地震速報」「午後4時23分ごろ 関東地方で地震がありました」「詳しい震度は入り次第お伝えしします」「地震速報 終」と簡単な表示が出ている。まだ下部には緊急地震速報のテロップは表示されたままだ。


次に表示されたのは「午後4時23分ごろ 関東地方で強い地震がありました」「揺れが強かった地域では津波に注意してください」「震度3以上の地域は次の地域です」「震度6弱 東京23区」…


5

ここで番組は終わり、アナウンサーと思われる人が登場し


「番組の途中ですが、地震・津波関連のニュースをお伝えします。いま東京が揺れています。テレビラジオのスイッチを切らないでください。落ち着いて行動してください。」


と同時にお天気カメラの映像が映し出され、高層ビルがかなり揺れている。


揺れが収まってきてスタジオに映像が戻る。


「午後4時23分ごろ 関東地方で地震がありました。震源は東京湾北部。深さはごく浅く、津波の心配ありません。地震の規模を示すマグニチュードは6.1です。」


「ここで○○市役所の担当者と連絡がつながっています。もしもし…」


アナウンサーが地震の被害を確認しようと市役所に電話をしているようだ


「ガヤガヤ…ツー。ツー。ツー」


電話が切れてしまった。


「市内でも混乱しているようです。また改めて電話します。」


ポーン!ポーン!


「緊急地震速報です。強い揺れに警戒してください。」


またナレーションを遮り、切迫した警告音と機械音声でこう伝える。画面下半分は赤地に白抜き文字で「緊急地震速報(気象庁発表)」と左に関東地方の真ん中に赤いバツ印の地図と青地に黄文字で「東京都で地震 強い揺れに警戒してください」と白抜き文字で「東日本」が表示される。


警告音とアナウンスを2回繰り返した後、通常の番組に戻る。


「緊急地震速報です…」


そうアナウンサーが言いかけた瞬間、スタジオ内を激しい揺れが襲う。


アナウンサーの声が揺れによるものがぶつかり合う音で聞こえなくなり、天気カメラの映像は揺れで建物が見えなくなる。


突然画面が真っ暗となり、そこで映像は途切れる。


「あの地震で、テレビ局が倒壊したんだっけ。眼鏡屋さんも…。」


私は途切れて砂嵐になった映像を見ながらそうつぶやいた。

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