第45話 騎士団長の素顔
とりあえず、ピーターさんと相談した結果一旦三人を騎士団の回復師に見せて、健康チェックをした後に、ひったくりを何度かしている長男カトルは衛兵に引き渡して、判断を仰ぐ…
厳しいようだが、罪は罪、償わなければならない。
ピーターさんの話では、窃盗をした回数などに応じて罰金などの可能性が高く、払えない場合は借金奴隷となるらしい。
因みに、あの時、僕に真空飛び膝蹴りを食らった冒険者も、借金のかたに売られたそうだ…町中で刃物を振り回した罪は駆け出し冒険者には厳しかったらしい…
まぁ、そんな事より、妹のナナちゃんはの病状が問題で、診察の後でクリーンで対象出来るのであればいいが、先天性のものかは解らないので診断まちなのだ。
すこし、気になるのは真ん中の犬っ子である。
拾った大きめのポロいシャツに縄でナイフを腰に巻きつけたワンピースっぼい姿で、片言っぽいかと思えば、語尾が「だわよぅ~」と、オネエっぽい事があり、
「サーラス、ナナ、しんぱいだわよぅ~」
と…何とも言えない雰囲気である。
一応、サーラスと名乗る獣人の子も、あんな場所で生活していたので健康診断をさせた。
そして、診断結果を回復師の騎士団員さんから聞くと、
「お兄ちゃんのカルト君は特に問題は無いですね。
そして、妹ちゃんは、皮膚炎が有ったぐらいで、
一番下の妹ちゃんが大変…」
と診断結果を話す騎士のおじさんの話を
「ちょ、ちょっ、ちょ!?」
と、僕もピーターさんも遮った。
「えっ、妹が二人?」
と聞くと、回復師のおじさん騎士は、
「はい、カトル君は男で、サーラスちゃん女の子で、ナナちゃんも…」
と、説明してくれるが、すんなりと情報が入って来ない…
「女の子、といえば…女か?」
とピーターさんが隣で呟いているが、それでも女の子の口調にしてもアレは違和感が凄い。
僕は、試しに、
「セクシー・マンドラゴラ姉さんって知ってる?」
とサーラス君…いやサーラスちゃんに聞くと、
「せくしーねぇ、スキ」
と答えた。
はい、ビンゴ!後で面会に行くとして、問題はナナちゃんだ、
診断結果では、傷口から入った毒素が体に留まり膿んでしまった状態であるらしい。
病気の事はよく分からないが、悪い物を体外に出せたならば、回復する可能性が有るはず。
ならば、話は早い!
僕は、ナナちゃんに近寄り「もう、大丈夫だからね」と言ってクリーンをかけた。
回復師のおじさんが、
「これが噂に聞くケンちゃんの癒しの御技か…」
と感心していた。
変な噂が流れていないことを祈りつつ、
「もう一度診察お願いします。」
とお願いした結果、
「高熱やらなんやらで、食事がとれずに栄養が足りないみたいだが、これからしっかり飯が食べれたら、じきに元気に走り回れるだろう。
この目で見たが、あの状態から今の状態に回復したのが信じられない…」
と診断が出たので、とりあえず今夜は騎士団の医務室預かりとなった。
なぜに、こんな特別待遇になったかというと、騎士団長の粋な計らいからだ。
…というか、騎士団長は引くほど面倒見が良いらしく、ピーターさんが連絡を入れると、
「馬鹿野郎、ウダウダ言ってねぇでさっさと連れてこい!」
と言ってくれて、騎士団本部に着くなり、
「診察前に体を綺麗にしろ!」
と言って、暖かいお湯をタライに溜めて待っていてくれたらしく、初めてお目にかかる騎士団長の奥方様と二人で、
「上の子はウチの長男のお下がりの服を持ってきてやろう。」
などど言ってニコニコして、奥方も優しくナナちゃんに、
「凄いお熱がありますね。
綺麗キレイしたら回復師のおじさんに見て貰いましょうね。」
とナナちゃんを抱っこして体を洗いに向かった。
ピーターさんが、
「子供好きの夫婦だからね…」
と言って見送っていたので安心してお任せできたのだ。
現在、三人は綺麗な服に身を包み、騎士団長の奥方様が消化に良さそうな料理を作てくださり、ガツガツ食べる三人をニコニコと夫婦で眺めている。
暫く眺めて満足したのか騎士団長が、
「この後あいつらをどうするんだ?」
と聞くので、僕が、
「カトルは例え熱に苦しむ妹に栄養をつけさせる為とはいえ、しでかした罪に罰を受けなければなりません。
あとの二人は勉強が先ずは必要なので家で預かりたいですね。
僕も死んだ親代わりの爺さんにそうしてもらったので…」
と、いうと、騎士団長は
「罪が決まったカトルはどうすんだ?」
と、怖い顔でいうので、僕は、
「そうですね、罰金を払ってやって三人一緒に連れて帰りたいですが、生憎財布ごと被害者の方に払いましたので…あっ、そうだ、騎士団から蜂の巣駆除の代金を頂ければ問題ないかなぁ~」
とわざとらしく言うと、騎士団長は、
「任せとけ、今からニック様からせしめてくるし、衛兵詰所には俺が連れて行く…勝手に圧力を感じて罰金が安くなりゃ儲けもんだ。」
と言って走って行ってしまった。
そんな会話をチラチラと横目で見ていたカトルが、
「俺たち…本当にいいのか?」
と聞いてくるので、
「しっかり勉強して、仲良くする事が条件だ、ド田舎だが、肉は沢山食べれるぞ。」
というと、サーラスちゃんが、
「肉、スキだわよぅ。」
と喜んでいる横で、騎士団長の奥方は、
「嫌になったらウチに来ても良いのよ。」
とスカウトしていた。
僕で無くても、もっと早く奥方様の様な方に出会えていたらこの子たちに他の人生もあっただろう… 捨てるヤツのばかりではなくて、こんな風に拾ってでも何とかしてやろうという大人だっていると知って欲しいし、できれば僕達兄弟みたいに人を信じれる様になって欲しい。
親に身勝手に捨てられただけの記憶のままでは大人に成れても他人を信じれずに、生き辛いだろうから…
腹一杯になり安心したのか医務室で眠りについた三人を奥方様と眺めていると、騎士団長が、ゼェゼェと走ってきた。
ベッドの側で子供達を見守っていた奥方様に、
「旦那様、今眠った所です!」
と、小声で叱られて、
「すまん、すまん、」
と小声で謝る騎士団長は、僕を手招きしている。
呼ばれるままに医務室の外について行くと、騎士団長は、
「全てが丸く治まったぞ、」
と、ニカッと笑い、
僕の狩りでの分け前…と言っても、宿りバチの卵を創薬ギルドに売り払った料金を、騎士団と折半した分の小金貨一枚を使い、爺やさんがファーメル家の代表として、迷惑をかけた住人に慰謝料を払いってくれる手ハズになったそうで、衛兵詰所に出頭すれば、罰金も減刑されて、犯罪奴隷などには落ちない様にしてくれるらしい。
蜂の卵の代金は、騎士団員皆と頭割りで構わないと僕が言ったのだが、
「いやあれは、ケン殿が体を痛めて稼いだ戦果、全てケン殿が…」
とニック様が言ったのを、
「摘出してくれたのは騎士団なので、」
と僕がゴネて半分こに決まったぶんではあるが、まさか、全部で小金貨二枚とは…あの真珠玉みたいな蜂の卵が百個で…二百万円か…金額は凄いが、もう二度とは御免である。
普通ならば、麻痺して痛くないが、『状態異常無効』で麻酔無しで体に異物を埋め込まれるのと同じなのだ、それを百個…思い出しただけでゾワゾワする。
しかし、精算は最終日の予定だったが、ニック様は色々と融通をしてくれたらしい。
そして、騎士団長は、革の小袋を僕に渡して、
「これは、肉を販売した分のケン殿の取り分です。
これで、あの子達の身の回りの物を頼みます。
それと、ニック様より、何でも屋ケンちゃんへの蜂の巣駆除の依頼料は暫し待って欲しいとの事です。」
と話してくれた。
革の巾着には大銀貨一枚と小銀貨六枚が入っており、
「こんなに?」
と驚く僕に、油の乗った猪魔物がかなり有ったのが良い値段になって、参加した団員皆も臨時ボーナスがこの額貰えると騎士団長さんは話してくれた。
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