第10話 子供は基本的に残酷
「昇格試験を受ける方はこちらへどうぞ!」
今日は昇格試験の日だ。
昇格試験はDランク以下の冒険者が受けれる試験で合格すれば1段階昇格する分かりやすい仕組みになっている。
ランクによって違いはなく、Dランク1人、Eランク2人、Fランク2人のパーティを組んで目標を達成できれば昇格である。
そして、引率や緊急時の対応の為cランク以上の冒険者は全員召集となっている。
「今回も粒揃いだな!まあ、上がれそうなのは3パーティってところか!」
「あんまり残酷な事を言わないように。我々を目指してる者もいるのですから。」
そんなこと言っているガレフとカーラを尻目に俺はクタクタな状態で話しかける。
「・・・やっと準備終わった。お前らも付いてきてくれよ。なんか嫌な予感がするんだよ。」
「・・・嫌な予感だと?どういう事だ。」
「今さっきまで森に行ってたんだが、誰かが獣呼びの石を大量にばら撒いてやがった。大方、高い評価を狙ってるんだろうがあれはヤバい。死ぬかと思った。」
「てことは、撤去は完了してるんだな?」
「もちろんだ、職員にも話通してあるから間引きをお願いしたい。」
「任せとけ!おいカーラ!」
「メンバーへの連絡も完了しました。5分後に出ます。」
「さすがAランクパーティだ。動きが早くて助かる。」
そう感心していると後ろから声をかけられた。
「私も同行しよう。」
「珍しいですね。sランクの女王がここにいるとは。」
「いつも通りに接してくれ。」
「エロ姐がいるの珍しいな、貴族に頼まれたのか?」
「エロ姐は止めろ!」
この人はエルサ・ロサーヌ。
このギルドでただ一人のsランクにして俺を助けてくれた恩人だ。
その昔、エルサさんと呼んでいた所を堅苦しいと言われてエロ姐と呼ぶようになった。
「今回はギルマスに呼ばれたんだよ。sランクが見ている方が受験生も張り切るからって。」
「まるで客寄せパンダだな。」
「相変わらず失礼な事を言う奴だな。そんなことより、さっきの話だがどれぐらい居るんだ?」
「ざっと150体ぐらいだ。時間経ってるからもう少し多いかもしれない。」
話し込んでいる場合ではない。
「まあ、とにかく早く行ってきてくれ。俺も帰ってくる時、間引きはしたけど無理すぎて撤退してきたから。」
「「「了解!」」」
これで少しは安心できるというものだ。
俺は受付嬢に話して試験時間を遅らせるように伝えた。
経験が物を言う世界なので割と聞き入れられ、試験を1時間後に変更すると言う通達が出た。
その時、受験生の1人が顔色が悪くなっていくのを見逃さなかった。
俺はそいつの肩を掴みながら
「ちょっとだけ話を聞かせてもらおうか。」と告げる。
走って逃げようとしたが、鎧を着ている相手に足の速さは負けないのですぐに捕まえて事情聴取した。
そいつの話では「ある人に頼まれた。何があってもケツは拭いてやると言われた。」との事だった。
誰だと聞いても答えられないと言うばかりであった。
なのでカマをかける事にした。
受付嬢に話を通し、受験生の前で「今回試験を行う森でスタンピードの予兆が発生した。すぐに止めないと試験が無くなるので手伝えるものは手を貸すように。」
そう声をかけると1人の冒険者が手を上げた。
「それなら俺が行きますよ。ゴブリン程度なら狩慣れてるし。」
「俺はゴブリンなんて一言も言ってないんだがな。」
「・・・あっ。」
別室に連れて行き問いただすと、ポイントが欲しかったとか早くcランクに上がりたかったと言った。
俺が説教しようとしたら部屋にガレフが入ってきた。
「もう終わったのか。」
俺がそう聞くとガレフはいい笑顔で答えた。
「あんな雑魚ども、俺らの手にかかればすぐよ。エロ姐もいたしな。」
そしてガレフは神妙な顔持ちになってそいつに問いただす。
「それよりも、なぜこんなことをした?cランクになりたいならゆっくりと実力をつければいいじゃねえか。なぜそんなに急ぐ。」
ガレフがそう聞くとそいつは笑いながらこう答えた。
「こんなおっさんになりたくないからだよ。いつまでもcランクでダンジョンも浅い層で満足して、情けない冒険者になりたくないからだよ!」
確かに言う通りだ。そう俺が納得して説教しようとするとガレフがそいつをぶん殴った。
「いい加減にしろよ、、、コイツはな!いつまでもbランクに上がれないんじゃない!上がらないんだよ!実力だってcランクの中じゃあ勝てるやつは少ないぐらいだ!コイツが浅い層にいる理由教えてやろうか!ダンジョンで死んだガキの遺品を集める為だよ!金にもならねぇ仕事だけどお前らがやらないからコイツがやってるんだ!そんな素晴らしい冒険者をお前如きが下に見てるんじゃねぇ!」
ぜ、全部バラされた。なんで知ってんだコイツ。
正直cランクになったらかなり稼げる。それこそ討伐だけやってれば食うには困らない。
だから下のランクは早くcランクに上がって稼ごうとする。
その結果、遺品の回収といった簡単なクエストもやらなくなる。
そうした依頼がギルドから俺に割り振られる。
確実に依頼を完了してくれるからだ。
「あの、ガレフさん、、、その辺で、、、」
受付嬢がそう声を掛けるとガレフはキレながら
「コイツは除名しよう。理由は危険行為とかで。」といった。
「やりすぎだ。下手すると死ぬぞコイツ。」
と説教するとガレフはそいつを担いで病院へ行った。
ガレフが出た後にラウンジに戻ろうとしたら扉の前にエロ姐がいた。
「ガレフにありがとうと伝えてくれ。」
「なんで?」
「あいつが殴ってなかったら私が斬ってたからな。」
怖い顔で怖いこと言うエロ姐をみて、俺は怒らせないようにしようと誓った。
ちなみに試験は中止となり後日行われる事になった。
異世界に転生したが種族以外普通な件 @master0804
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