最期に

非道ひどい夏の終わり。否、始まり。

炎天下と言うには少しばかり心許こころもとなく、

空から落っこちた貴方の遺骸。


辛くはなかったか?

寂しくは、なかったか?

出されたいとま、大事になされよ。


強情な、ひどく我儘な貴女の遺骸は、

ひどく寂しい。ひどく静かだ。


空を見上げても、貴女は屹度そこにいない。

何処にもいない貴女は、けれど確かにそこにあって。


一世紀に僅かに満たない短い余生は、

楽しかったか?


死なせてくれと天へ祈った数年、

貴女の願いは大勢に見送られて成就した。


ただ、私達の我儘を一つ聞いてくれ。

もう少しばかり、目を開いた儘でいてくれよ。

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詩集「孤独の詩」 口十 @nonbiri_tei

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