愛を込めて

久方ぶりに、身内が死んだ。

九八歳だ。寿命だろう。


不思議と悲しくはなかった。

屹度きっと、飼っている猫が死んだ時の方が悲しいだろう。


だが思う。思わねばならない。

曾祖母は幸せだったろうか。


多くの友人を、家族を看取った彼女の最期は、幸せだっただろうか。

死なせてくれと仏に神に祈り続けた彼女の最期は、幸せだっただろうか。


おばあちゃん。貴方は私とは違う希死念慮の中に居続けたのか?


おばあちゃん。貴方は私に沢山の愛情をくれた。まだ返しきれていない。

返済を望んている訳ではないのは知っている。


私の顔は覚えていたかい?

一年以上会っていない曾孫ひまごの顔だ。忘れていよう。


それで良いのだ。数少ない海馬を有効に使っている証だ。


明日、葬列に並ぶ。その時まで、私の曾祖母は、元気なのだ。

棺の中を覗くまで、否、覗いた後もずっと、曾祖母は笑んでいる。


余暇が増えたよ、大おばあちゃん。

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