越の無旦王子(むたんおうじ)
第10話 倭人は、暢草(ちょうそう)を献じる
「かつて、われ等は、大陸人から領地なき海人として、沿岸の湊を利用する特権が認められておりました。周の二代目
「その話は、
さすがに
「ありがたきお言葉に感謝いたします。われは、その
「戦いに敗れた兵士は、海に逃れれば、命だけは助かると言っているらしいではないか。」
「よくご存じで・・・、その通りであります。海に逃れた者たちは、いまや、大半が海賊の一味に加わっております。救う側の海賊もそのつもりであります。何時の日か、奪われた領地を取り戻そうと志を持った敗残の将も居ますが、ほとんどが
昆迩は、言い終わると大きなため息をついた。
「だが、そのような大陸の戦争と、秋津洲とは直接に関係があるはずもなかろう。豊浦宮を襲った
すると、豊浦宮の留守居を守る
「もともと海賊の多くは、
「
「いえ、
「ほう、ふるさとを捨て、海を渡り、逃れてまいるのか。」
「帰るべき故郷を奪われた者たちであります。豊浦宮では、多くはありませんが、
流民のことについて、
「
と、わざと
「先般、
「湊の利権が争われているのか。天子も王も形なしであるな。」
「まこと、その様であります。大陸では、海も陸も河も各部族の報復の最前線となっております。特に、湊の奪い合いは甚だしく、裏切りやいわれなき怨恨が渦巻く殺戮の場となっております。豊浦宮を襲撃した海賊は、そのような輩が海を渡ってきたのでありましょう。」
「蓬莱湊を襲った連中が、最後の越王
「なんと、
「ほう、越の王子を
もはや、口に出したものは取り返しがつかない。
「いかにも越の王子とは、第一王子の
昆迩は、已む得ず王子の名を出してしまったが、これ以上の話をいささか
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