襲われた豊浦宮
第6話 潮(うしお)の訴え
その「かげろうの誓」から十日が過ぎ、日もやや傾き始めたころ、西の方、
「高天原の大神に申し上げます。われ、大海原は
豊浦宮の使者、
「
近頃は、西国の使いの者が、
高天原には派遣できる程に兵士はいないのだが、大神の
「申し上げます。わが
「なんと、
「これまで、西の海では多くの島々や浦々が、海賊による襲撃を受けてまいりましたが、それでも
高天原では、つい十日前、正式に世継ぎの祭祀が行なわれ、新たに
「われについてまいれ。」
と言って、
「頭を上げられよ。ご苦労であったな。
「申し訳ありません。いかにも、神をも
「賊徒というのは、海賊の輩であるのか。」
「いかにも、この処、頻繁に西の海のあちこちの島から報告が上がっておりましたが、実は、豊浦宮への襲撃は、二度目にて御座います。」
「なんと、前にも襲われたことがあったのか。」
「申し訳ありません。最初の時は、大陸からの避難民と思って甘くみておりました。 一年前のことであり、五隻の運搬船でありました。その時は、特別の襲撃もなく、半日ほどわれらを威嚇すると姿をくらましました。われらは、直ちに
「
「三十隻は
「おお、勇敢な水主衆が残っていたものよ。それで、・・・。」
「奴らの船は、先の尖った
「それで、どうした。」
訊ねたのは、金拆神であった。
「わが方は、船の数では負けておりませんでしたので、太めの丸太に穴を開け、
「ほう、海賊どもを追いやったのか。さすがに、豊浦の水主衆であるな。」
「だが、それで諦めるような奴らではありませんでした。われらは、次に奴らが攻めてくる前に、
「それで奴らは、また、やってきたのか。」
「そうです。ひと月前のことでありました。今度は、五十隻を連ねてやって来ました。奴らも準備をしてきたのでありましょう。浮き丸太を見つけると、十隻が浮き丸太のまわりを取り囲み、水主衆が次々に飛び込みました。浮き丸太をつなぐ
ようやく報告を終えると、
「それで、
「それが・・・、
「おお、そうであったな。立派な跡取りが育っていると聞いている。」
「
「なるほど、それは、急を要しておるな。」
「近頃の海賊は、西の海に現れては、
「なんと、西方衆とわたつみ衆の護りをかいくぐってこようとは、賊徒も並みの者達ではないな。」
「ただ今は、響きの海に一斉に船を出して捜索いたしております。隣接する
「かしこねの海では、そのような不届きな海賊が頻繁に襲ってくるのか。」
「いかにも、さようで御座います。大陸での争いが激しくなるにつれて、
「瀬戸の
「近頃の奴らの様子からしますと、離れ小島や人里離れた浜浦を見つけると、これ幸いと上陸し、自分たちの
「なるほど、そのような筋の通らぬ賊徒との戦いを認めてくれと申すのだな。」
「是非にも、ご理解いただきますようにお願い申し上げます。」
「それは、はるばるの使い、心得た。
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