第8話
その後、ティトは順番に少女たちの首輪をはずしていった。
首輪をはずしてもらった少女たちはそれぞれティトに礼を言うと、セリナのところに行く。
そこでちょうどいい大きさに切られたシーツを受け取ると、体に巻き付けた。
最後の一人の首輪をはずしたティトは、部屋の入り口に向かう。
地上に意識を向けるが、まだ誰かが駆けつけてくるような気配は無い。
「さすが兄さんだね」
ティトは小さな声で兄を賞賛した。
振り返ると、そこには体にシーツを巻いた6人の少女がいた。
「準備は、よさそうですね?」
「「「はい」」」
6人が一斉に頷いた。
「僕が先に行くので、後ろからついてきてください。できるだけ、音はたてないで」
ティトが小声で言うと、全員が静かに頷く。
それを確認して、ティトは階段を登った。
1階の扉から顔を出して、廊下の様子を伺うが、まだ誰もいない。
後ろの6人に、そこで待つように伝えると、ティトは廊下に出て、厨房の様子を伺った。
先ほどと変わりは無さそうだ。
料理人の男が二人、厨房の床に倒れて寝ている。
階段に戻って、少女達を呼ぶ。
少女たちは音を立てないように静かに歩いて厨房に入った。
ティトは、そのまま裏口を目指す。
「ちょっと、ここで待っていてください」
裏口の手前で少女たちを待たせると、ティトは一人で外に出た。
その手には、朱い宝石を持っていた。
爆炎石だ。
ティトはそれを振りかぶると、思いっきり、屋敷を囲む塀に向かって投げつけた。
ドゴォオオオン。
「きゃぁ」
辺りに爆音が響き、少女たちは驚いて悲鳴をあげる。
炎と煙がおさまった後の屋敷の塀には、爆発によって大きな穴があいていた。
「さあ、逃げましょう!」
ティトの先導に従って、少女達は塀の外へと出る。
「すぐに追いつきますので、この道をまっすぐ、街の出口に向かって走ってください」
塀の外に出たところで、ティトは少女達に向かって言った。
少女たちは、不安な表情をティトに向けたが、すぐに諦めたように走り出した。
何人かは、後ろ髪を引かれるように、チラチラとティトを振り返っているが、全員が言われたとおり街の出口を目指す。
ティトは、それを確認すると腰のポーチから小瓶を二つ取りだした。
一方には透明な液体が。
そしてもう一つの小瓶には白い粉が入っている。
二つの小瓶の蓋を開けると、液体の入った方の小瓶を崩れた塀の
そして、もう一方の小瓶に入っている白い粉を、液体の小瓶へと注ぐ。
液体と粉が混ざると、小瓶の中から勢いよく白い煙があがった。
その煙はすぐに広がって、穴の開いた塀を包み込む。
ティトは、それを確認すると少女たちを追って走り出した。
白い煙は、さらに広がっていき、やがて屋敷の裏手全体を覆っていった。
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