裏
「はぁ…あの女、こんなのよく信じたな」
まったく趣味じゃない
この世界は、既に終焉を迎えている。戦争があった訳でも、変なウイルスが流行った訳でも無いのだが、ありとあらゆる動物が死に、今は植物だけが無雑作に生え散らかしている。まぁ、虫もいないから生きてる植物も限られているんだろうけど。他に生きているとすれば微生物だろうか?顕微鏡なんて植物に飲み込まれてたり、壊れてたりして使えなかった。顕微鏡なんて触ったのは、夢も希望もあると信じて止まない小学生ぶりだろうか。
俺とあの
あの女の生活は、目を当てたくないものだった。
穴だらけで擦り切れた布団で十二時過ぎに起きて、濁った水で顔を洗って、ボロボロの薄汚い服を着て、殆ど味の無さそうな非常食や雑草を食って、ヨレヨレになった本を読んだり
毎日これなら、死んでるも同然だろう。
「さて、そろそろ俺も逝くか!壊れた人間見てると、逆に冷静になっちまうんだよなぁー!」
こんな大声を出しても、咎める奴は誰も一人としていない。つい先ほど、もう一人は飛び降りて死んだんだから。
足を伸ばし、腕を伸ばし、首を回す。なんの意味の無い体操だ。ごりごり、ぱき。気持ち良さと気持ち悪さが同居した音と、感触がする。
「吊り橋効果みたいなもんだろうけどさ、好きだったぜー!名前も知らねえ自堕落女ぁー!」
下に居る
肺に空気をたっぷり貯めたら出っ張りギリギリに立ち、そのまま前へと倒れ、頭から落下した。
死の直前は、こんなにも実感できないものだったのか。
ここは何階って書いてたっけな。忘れちまったけど、これくらい高けりゃ絶対死ぬだろう。現にあの自堕落女はもう死んでるっぽいし。あんな植物どもはクッションにさえなってくれやしねえ。死後は植物に吸収されるんだろうか。なら骨も残さず、しっかり食ってくれよ。骨に栄養あるのか知らねーけど。
こんな状況下でも、まともな精神状態のつもりだった。でも、やっぱり俺も、壊れていたんだろう。下手すると、あの女よりも壊れていたのかもしれないな。あの女が持ってたボロッボロの小説読んで、
死ぬならさっさと死ねばよかったのに、俺はなんで死ななかったんだろう。寂しかった?たまたま同じように壊れた人間を見つけて嬉しかったのか?まぁ、無意味なことをするのが人間なのか。
劣悪な家庭に
落ちてばっかの人生、意外と最期の方は楽しかった。
死活 勿忘草 @Wasu_Rena_Gusa
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