終章
──数ヶ月後。
鴎外の読み通り、大規模な抗争が起きた。
ヨコハマ裏社会史上最悪の日々。ポートマフィアを含むあらゆる組織を巻き込んだ流血と殺戮の大規模抗争。『龍頭抗争』。
抗争の最中、太宰と織田作はポートマフィアの資金洗浄を行なう会計事務所を訪れていた。上からの命令を受け、抗争で死んだ構成員たちの所持品を届けるためだ。
「こちらです」
事務所に入り要件を伝えると、管理人の男は壁のうらにある隠し部屋へと二人を案内した。
そこにいたのは──
ふと、太宰は目を開けた。
寝てしまっていたのか──
どれくらい寝ていたのだろうか? あたりはだんだんと夕暮れに染まり始めていた。
「あまりにも心地が良かったから思わず寝てしまったよ。やっぱり、この場所は気持ちがいいね」
座ったまま大きく伸びをした。
「君と初めて会った時の夢を見たよ。随分と懐かしかった。君の隣が落ち着くからかな? それとも──」横目で墓標を見た。「君が見せてくれたのかい? 君も懐かしんでいるのだろう? だって今日は──」
遮るように吹いた風に、太宰の言葉はかき消された。
「さて、私はそろそろ行くよ。今日は久々に“彼”と会うんだ。待たせてもいいのだけど、そうしたら帰ってしまいそうだからね」立ち上がると、前を向いたまま首だけ傾けて振り返った。
「彼を連れて行くから、先にあの場所で待っていてくれ」
墓標に背を向けた。
「それじゃあ、またあとでね」
夕暮れに染まる街へと歩き出した──
Avenger of the Former Chieftainー二人の出会いー 猫ノ介 @000200201
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