第8話 竜魔法炸裂

 魔法士達を引き連れて王都の外に向かうと冒険者の部隊もメイドの部隊も疲れが見え始めていた。


「皆さん! 魔法士を連れてきました! 一旦引いてください!」


 私が叫ぶと追ってくる魔物を処理しながらこちらに向かってくる。


「ダンテさん! お願いします!」


「よっしゃ! みんなメイサちゃんのお願いだ! デカいのぶちかますぞ!」


「「「おう!」」」


「我らが魔力を糧に炎の渦を成して敵を撃て」

「我らが魔力を────」

「我らが─────」

「我────」

 

 魔法士のパーティーがみんな同じ詠唱をする。そのパーティーの周りには魔力が渦巻いているのが分かる。


 それぞれの詠唱が終わったようだ。


 魔物の群れてるところに巨大な魔法陣が形成される。


「「「ファイヤーストーム!」」」


 突如現れた野太い炎の渦が魔物たちを一瞬で消し炭に変えていく。

 数十メートル離れているだろうが、熱気は凄まじく焦げたなんとも言えない匂いが辺りに充満している。


 魔法士の魔法はやはり素晴らしく、この危機を乗り越えるには必要だと感じた。


「ダンテさん! すごぉーい! 流石は魔法士の皆さんですね!」


「いやー。メイサちゃんには魔法士のみんなは世話になったもんさ。金がない時も飯を食わしてくれて、出世払いでいいと言ってくれていた。それなのに! 俺達は要請がないから出撃できないなどと! 情けない! みんなそうだろ!?」


「おう! そうだ!」

「メイサちゃんには世話になった!」

「俺が嫁に迎えたかった!」

「メイサちゃんの為なら何だってするぜ!」


 魔法士の他のパーティーも来ていたが、メイサを知らないものは誰一人として居なかった。


「もういっちょ行くぞ! 次はもっと広範囲にやる! こっちのパーティーはファイヤーストーム! そっちはウインドストームだ! 合成させよう!」


「「「了解!」」」


 そこに来た魔法士たちはドンドン魔物を殲滅しだした。

 この調子ならすぐに片付く、そう思った。


 現実はそんなに甘くはなかった。


「おい! あれ!」

「何であんなのが居るんだ!?」

「聞いてねぇぞ!?」


 そこに現れたのは黒い竜であった。


「グルルルアアアアアア!」


 完全にこちらを標的にしている。

 この竜を王都に通す訳には行かない。


「怯むなぁぁぁ! 合成魔法を放つぞぉぉ!」


「ファイヤーストーム!」

「ウインドストーム!」


 凄まじい熱気が当たりを包み込む。

 空気が焼かれドラゴンがでてきた近くの森は火に当てられ焼けている。

 渦巻く風について行くように周りの風がそのうずに吸い込まれていく。


 どんどん大きくなる炎の渦は周りの風を巻き込んでいく。

 立っているのが困難な程の風が吹いている。

 天にも登りそうな火柱が上がっている様は凄まじくみんなの疲労した顔を赤く照らしている。


 魔法士が息を切らして固唾を飲んで見守る中、炎が晴れていく。

 その先にいた黒竜は動かない。


「おぉー!」

「やったか!?」

「ちょろいぜ!」


 ────グルルルルルルアアアアア


 息が途絶えていたかと思ったが、そうでは無かったようだ。あの魔法で太刀打ちできないとなると他の魔法でどうにかしなければならない。


「どうする? 俺たちの最大の魔法だったんだが……」

「他になにかないのか?」

「まず、足止めだ!」


 一人の魔法士が声を上げて手を翳した。


「我らが魔力を糧に地の壁で我らを守れ! アースウォール」


 黒竜の行く手を阻むように高さ五メートル程の土の壁が現れる。それに続くように次々と土の壁が現れた。


「俺たちの街には近付けねぇ!」

「我々の街は守る!」

「諦めねぇぞぉぉぉ!」


 その時、黒竜が煩わしそうにその壁を見ると頭を仰け反らせて口に黒い光を生み出した。それは段々と大きくなっていき黒々としたエネルギーを増幅させて行く。


「まずい!」


 叫んだ時にはもう遅く、黒々としたレーザーは竜の行く手を阻んでいた壁に直撃した。次々の首を振りながら壁を破壊していき、仕舞いには王都の壁をも破壊した。


「クソっ! やられた! アイツが向かってくるぞ!」


 壁が崩れた所を見た私は身体が勝手に動いていた。

 壁に穴が空いた所へ向かって走ると倒れていた人を見つけた。


「メイサ様!?」


「この人を安全な場所へ。この辺の人たちを避難誘導するのです!」


 この王都の人達から犠牲を出さないようにしなければという使命感が私の心を強くする。メイド達にも指示を出して彼の前に立ち塞がる。


 竜が相手なら、この中での適任は私以外に居ない。なぜなら、対抗する術を持っているから。


「私があの黒竜を引き付けます! その間に避難させて!」


「いけません! メイサ様に何かあっては!」


 極力冷静に、そして平静を装って告げる。


「私は、竜騎士の妻です。この王都を守るという使命があります。ここは私に任せて」


「しかし! ドラゴン相手では!」


「見ていてください。私の力を」


 手を黒竜に翳して前に出る。


「私が相手です。この王都はやらせない!」


 ────グルルルルアアアア!


 再び黒竜は口に黒々とした光を溜め始めた。


「私が迎え撃ちましょう!」


『竜の白砲』


 私の口から紡ぎ出された竜語。

 それにより発動されるのはシルマ様の放つレーザーの劣化版。


 白い光が翳した手の前に収束していく。

 そしてその光は大きくなり輝きをましていく。


 ────グルルルルルルアアアアア


 黒いレーザーが放たれるのと同時に放たれた。


 ────ゴルルルルルアアアアアアァァァ


 目の前は光で何も見えなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る