第7話 魔法士ギルドで依頼発出

 少しこの生活にも慣れてきたなぁと思った頃、この王都周辺では魔物が多くなってきているという情報が入った。


「俺はシルマと何か原因がないか探ってくる。アリス!」


「はっ!」


 返事をしたのはメイド長。

 瞬時に現れてリンガ様の前に膝まづいた。

 

「屋敷はお前に任せる。何かあったらお前が指揮をとれ」


「はっ!」


「では行ってくる」


 リンガ様はシルマ様を伴って出かけて行った。


 屋敷は何かあった時のための準備で忙しく動き回り始めた。

 保存食を作り何かあった時のために動き回る。


「アリスさん、私にもなにか手伝わせて?」


「わかりました! では、この米を握っておにぎりを作りましょう!」


「この米というのは初めて見ました」


「美味しいですよ? ただ、食べ過ぎは厳禁です! 体が保てません」


「なるほど! 勉強になります!」


 アリスと周りのメイドさんに教えて貰いながら手でお米を握ることに専念していた。


 ────カンッカンッカンッカンッ


「鐘の音ですね。王都に魔物が襲ってきたようです! 皆の者! 戦闘準備!」


「「「はっ!」」」


 流石は竜騎士直下の戦闘メイド達、すぐさま革鎧を装着して武器を携帯する。

 私はそのままの姿だが、腕まくりをして意気込んでいる。


「出るわよ!」


「「「はっ!」」」


 私も含めて総勢二十名位だろうか。

 ぞろぞろと屋敷から出ていく。

 

 道中は皆混乱していて壁から離れるように言いながら門に向かう。竜騎士の屋敷に行けばご飯があるという事も触れ回りながら。


 屋敷の外に出ると魔物がワラワラと多数闊歩していた。

 こちらを見つけるなり襲ってくる。


 襲ってくるのは素早いウルフ系と角を生やしたホーンラビット、それにボアがいる。

 それぞれのランクはD以下だが、如何せん数が多いからどうしたらいいものかわからない。


 先に来ていた冒険者達が応戦している。

 数が多くて苦戦しているようだ。

 魔法を使えるものが居ない為、大規模な殲滅ができない。


 かと言って魔道士ギルドに声をかけると多額の料金を請求されるのだ。

 これまで学院に行ったりしていて、その知識で魔法を行使してあげているんだから。そういう理由で報酬がかなりふっかけられるのだ。


 奴らが不利になれば自分達で片付けるんじゃないかと思うが、何か策は無いものか。


「少しでも数を減らしますか?」


「メイサ様の竜魔法は最終手段に取っておきましょう!」


「わかったわ」


「メイサ様は下がってください! 竜騎士直下部隊の力、見せるよ!」


「「「はっ!」」」


 メイド達は激しさの増す戦いに身を投じていく。

 激化するその戦いを見ていると自分も何かしなければと思ってソワソワする。


 魔法士ギルドといえば、常連のお客さんのダンテさんが魔法士ギルドでパーティーがCランクに上がったということでお祝い会をした事があった。

 その事が頭にが横切った瞬間に地面をけって魔法士ギルドに向かう。


 魔法士ギルドは王都の中では中心部にある。

 走れば十分で何とか着く。


 街の状態を見ながら魔法士ギルドへと向かう。


 着くなり勢いよく扉を開けて受付に行く。


「ダンテさんと連絡を取りたいんですが!?」


「はぁ。貴方はどなたですか? そんな簡単にCランクパーティーのリーダーを呼びつけれるわけないでしょ?」


 これは完全になめられているとそう感じた為に名前を使わせてもらうことにした。


「私は竜騎士リンガの妻です! この身分でも対応できませんか!?」


「えっ!? あのっ!? し、失礼致しました! ただいま、通信魔法でお呼びします!」


 魔力を流し何かをブツブツと話している。

 魔法で連絡が取れるのは知っていた。

 私もシルマ様との連絡手段は魔法だからだ。


「只今お呼びしました! 少しお待ちください!」


 待っていると、受付嬢に問われた。


「竜騎士様にどうやって射止められたんですか?」


「ふふふっ。シルマ様を無下にしない事、ですかね?」


 私は受付嬢にパチンッと方目を閉じてウインクをする。

 受付嬢は顔を真っ赤にして裏に逃げていった。


 ────バタンッ


 入口が勢いよく開かれた。


「誰ですか!? 竜騎士の妻って人は!? 人を呼び付けて!?」


「あっ、ダンテさん! お久しぶりです! すみません! お呼び立てして……」


「えぇっ!? メイサさん!? 顔が綺麗に……」


 ダンテさんはあまりの驚きに顔を指さして口をあんぐりと空けている。


「はい。シルマ様に治して頂きました」


「竜に……ですか。竜騎士の妻になったと噂では聞いていましたが、まさか本当だったとは。それで? どうしました?」


「あのっ! 今の王都の外の状況をご存知ですか!?」


 私が問いただすと苦虫を噛み潰したような顔をして下を向いた。


「知っています。しかし、ギルドからは何も言われていない。要請がないと出れません!」


「依頼があればいいんですか!?」


「それはそうですが……」


 ドンッとカウンターに布袋を載せた。


「ここに金貨が数十枚あります。報酬としてはどうですか?」


「破格です」


「では、これで魔物の殲滅を依頼します! 来たパーティー皆でこの金貨を山分けにしましょう!」


 この話は瞬く間に魔法士の間に広がり、王都では魔法士による総力戦が行われようとしていた。

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