第3話 私に何が出来る?
私は天から降り注ぐ光を浴びる夢を見て目を開けたのだが、目覚めたはずの現実にも夢と同じような光景が広がっていた。
「あっ。私、そうだ。シルマ様に嫁いで来たんだったわ」
────コンコンッ
「あっ、はい!?」
返事をするとメイドが入ってきた。
昨日案内してくれたメイドとはまた別のメイドだ。
「おはようございます。メイサ様。昨日は夕食を食べることなく寝てしまわれたので心配しておりました。朝ごはんが用意できておりますので、お召し上がりください」
昨晩のことを思い出す。部屋に入ってきて、シルマ様と同じ部屋なんだなぁと思った後が問題だった。その後にベッドに飛び込んで弾力を感じていたところ、寝てしまったみたいなのだ。
「はい! 着替えって……」
スッと部屋に入り私の服が入っているクローゼットに案内してくれた。
「ここに着る物は入れてあります。失礼を承知で言わせていただきますが、竜騎士様の奥様になられたのですから、もう少し仕立てのいい服を着てはいかがでしょうか。お綺麗な顔にスタイルもいい。もったいないですよ」
昨日のことはおそらく噂で広まっているだろう。それはいいのだが、そうなると確かにそうかもしれないと思えてくる。
竜騎士に嫁入りした人として皆に見られる。
そうなれば私が綺麗にしていないと竜騎士様が何故あんな娘を嫁にしたのかと言われかねない。
「あっ……はい。アドバイスありがとうございます! ちょっとリンガ様に相談してみます!」
「いえ! 私の方こそ出しゃばってしまいすみません! あまりにも綺麗だったのでつい……」
「そ、そんな事ないですよ!」
「いえいえいえ!」
「いやいやいや……」
「「あはははは」」
二人で声を上げて笑ってしまった。
胸がスッとしてつっかえていたものが少し取れた気がする。
竜騎士様に仕えているメイドだから堅苦しい関係で居なきゃいけないのかなと思ったけど、そんな事ないみたいね。
「お着替え手伝いましょうか?」
「あっ、お願いします。体を拭きたいんですけど、良いですか?」
「もちろんでございます!」
そう言うと部屋から少し出て布と水を持ってきてくれた。
少し恥ずかしいけど服の脱ぎさり背中を拭いてもらう。
「ホントに綺麗なお体ですね」
「そんな事ないですよぉ。このお屋敷で私に何か出来ることってありますか?」
「そんなことさせられませんよ。竜騎士様の奥様ですよ? 何もしなくていいですよ!」
そんなことを言われても私はジッとはして居られない性なのだ。
なにか無いかな?
体を吹き終わると持ってきた別の服に着替える。腕をまくり、洗濯をしようと考えていたのだが。
「メイサ様!何をなさるんですか?」
「服を洗おうかと……」
「それは私共がやりますので!」
持っていた服をスッと取ると持って行ってしまった。
なんかしてないと落ち着かないのよね。
今思えば朝から朝ご飯を作って、洗濯して、洗い物して、店の仕込みを手伝って、店で接客して、ずっと働いていたのかもしれないわね。
でも、私はそれが心地よかった。
「メイサ様、お食事に行きましょう!」
「あっ、はい!」
メイドについて行く。
「あの、お名前は?」
「あっ、私は副メイド長のルノと申します! 以後お見知り置きを」
「ルノさん。覚えました。私、顔と名前を覚えるの得意なんです!」
「ありがとうございます。こちらです」
大広間に行くと大きなテーブルが目の前にあり、リンガ様が先に座っていた。
「あっ、お待たせしてしまい申し訳ありません!」
失礼なことをしてしまったと思い、咄嗟に謝罪をする。
「そういうのいいって。メイサは俺の妻なんだから、なんでも甘えていいんだよ?」
笑顔を見せて私にそう言うと、ルノさんに「朝食持ってきて」と指示を出した。
運ばれてきたのは卵料理とパンとスープであった。思ったより質素だなと不意に思ってしまった。それが顔に出てしまっていたようだ。
「質素だと思ったかい?」
「あっ、なんか意外だったので……」
私は咄嗟に自分が思ったことを答えてしまった。失礼だったかもしれないなと後悔する。
「豪華な食事をしていると思うよね? けどね、あんな貴族みたいな食事を朝からしてたら身体が鈍るんだよ」
「そう。ですね。たしかに」
「でしょ? でね、食事で健康な身体になった方がいいと思うんだ。立場上ね」
なるほど、食事から気をつけているということね。そこから意識が高いのは流石は竜騎士様だわ。
「あの、私に出来ることは何かありませんか? さっきルノさんに聞いたんですが、何もお手伝い出来そうになかったので」
「メイサは、着飾って居てくれるだけでいいんだよ。それだけで、シルマは上機嫌だし」
そんな。いてくれるだけでいいって言われるのは嬉しいけど。
シルマ様の為になにか……。
そうだ。
そうよ!
盲点だったわ。
いいじゃない! 私ならできる!
「リンガ様、今やりたいことが決まりました!」
「おぉー。どうする? デートでもする?」
「私に竜語を教えてください! お願いします!」
リンガ様は目を見開いて頬をポリポリとかくと少し顎に手を当てて考える素振りを見せた。
「……うん。いいかもしれないね。……竜語をマスターできれば竜魔法も使えるしな」
「ホントですか!? やった! 今日から、ビシバシお願いします!」
こうして私は竜語をリンガ様に習うことになったのであった。
ちなみにそれを聞いたシルマ様は大いに喜んでくれた。
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