12話・愚清の勘違い
愚清は、勘違いをしていた。
仕事で廃貴姫の冷宮移動を手伝った。褒美に菓子を下賜をされた者達の内緒話を聞き付けた黒ネズミ(チクり屋宦官)の報告を。
愚清は、勘違いをしている。
初めて食べた角煮饅頭の美味しさ・色とりどりの点心の味・腹一杯に食べれた嬉しさ・笑いながら食べる楽しさ。
それは…愚清が、何時も食べている料理より格下のものだと…。
下級宦官や下働き達が、初めて食べた夢の様な点心や菓子は、後宮では、普通の料理であった事を。
愚清は気付かない。自分が、どんなに美食家と言う事を。恵まれた食事を食べれるほんの一握りの人間であると。
わらわは、知っている。美食に際限は無い。愚清の要望に応えられない事を。
わらわは、知っている。空腹こそ最大の調味料と美食の大家が、言っている。
「両替は、無用じゃ。帰れ」
「香陽姫の葬送には、あれこれ手を尽くしました。わたしの働きで、独房送りは、無くなり。そのように沢山の品物を受け取れました。是非ともわたくしにも下賜を賜りたく参上いたしました」
話し方は、丁寧だが、要するに飯を奢れと言われても〜舌の超えた肥えた男に言われても普段食べている物を出しても満足しないだろう。
返事に困っていると娃鈴が、畑の緑の山を指差し・うふんと笑う。わらわもウフンと笑い返し。「下賜は労働に払おう。おぬしこの後時間は、あるか?なぁに、2時ほど手伝ってくれ。そなた達も手伝え。まずは、その重い衣を脱ぎこれに着替え。畑に行くぞ」
泥で汚れるからと強制的に脱がし…どさくさに胸と腹をタプタプ。前世のダーリンに良く似たお肉の手触りを堪能し何時か着せる機会を夢見て縫っていた。15Lサイズの簡易服を着た悪清の柔らかい背中を押し触り畑に連れ出す。わらわは、デブ専。お付きの宦官達は、粗末な服なので、そのまま〜いざ→さつま芋畑に突入。
畑・今日の予定は、ワサワサ繁ったさつま芋の茎と葉っぱの撤去。人手がある好機に決着を付けよう。
ついでに居場所を無くし引き取り手も無く。わらわの居の前に居た隣の下働き女。門が開いているので、どちらからも丸見え…関わると面倒事になると放置され食事を貰えて無いから、そろそろ限界かな?
娃鈴に耳打ちをして女を頼み。いざ茎と葉の刈り取り。人数多いから刈り取り班と分別班に分けて作業開始。
愚清は、勿論わらわと組んで刈り取り。慣れない作業で、苦戦する愚清の鎌捌きの恐い事。結局愚清と宦官が、葉と茎を持ち上げ。わらわが、茎を切るを繰り返し一時半で終わった。
娃鈴と女が、白飯とさつま芋の茎の生姜炒めにきんぴら・乾燥ワカメの汁物を準備してくれ。まずは湧水を飲み…飯を食べる。
不満げにわらわを見る愚清に、茶碗と箸を渡し先に食べる。自分から言い出した事なのでぐっと堪え食べ始めた愚清は、すぐにおかずとご飯を食べ終わり茎と水を交互に食べ飲む。
「ご飯のお代わりどうぞ」
娃鈴がおぼんを出せば、愚清に気を使いながらも宦官達もお代わり。愚清×5杯・宦官達と女×3杯で釜の飯は完食となった。
ここで愚清を利用。あれを頼むとしょう。「わらわの注文に協力してくれたら更に旨いものを馳走するが、どうじゃ。そうじゃなぁ。次は芋掘りを手伝え。料理人への繋がりも頼む」
つり銭代わりに食材を寄越した料理人ならあれの手配も出来よう。
金切り姫・冷宮でスローライフ らくしゅ @tomi20184
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