宇宙は広い

@okih

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「ねぇ、宇宙人っていると思う?」

再来週にあるテストに向けての勉強会(二人)の最中。赤点ギリギリから抜け出したいと言っていた開催者の友人は、唐突にそう聞いてきた。

ペンを回して、完全に飽きているようだ。

今居る二人だけの教室は冬だからか少し暗くて、電気を消せば星が少しは見えそうだった。

「いると思うよ。だって宇宙ってすっごく広いんだからさ。何万も星があるなら生命体がいても不思議じゃないよね」

次に分かりにくそうな問題を探しながら答えた。

数学ばかりだったから、気分転換として英語に変えよう。同じものばかりよりもころころと変えた方がいいと聞いたことがあるし。

「本当?じゃあさ、どのくらい遠くにいると思う?」

「あ〜、10億光年くらい?」

中学生の時に習ったうろ覚えの記憶から、光年という桁?を引っ張り出した。ものすごく遠いってことだ。

「ふーん?」

何か含みを入れたようにそう言った友人は、ニヤニヤと笑い始めた。

「なんでそんな怪しい笑いしてんのさ。なら、君はどのくらいだと思うの?」

「え〜教えて欲しい?」

そう言ってニヤニヤする友人に少しイラッとして頭を柔らかくチョップする。

「いたーい」

わざとらしく頭を押えた友人を見ながら、質問の答えを話す。

「教えて欲しーなー」

「棒読みじゃん。まぁ良いけど」

目の前のコイツは、ペンを置いて、上を指しながら、

「すぐ近くの星で、無機物のふりして君たちにバレないように存在してるんだよ」

大袈裟に、まるでそれが真実だと言うように話した。

「へー」

私にはどうでもいいことに違いないが。

「実を言うと、私もそこの宇宙人なのだ!」

そう言って、決めポーズ?のような格好をした。何言ってるんだか。

「だから赤点か赤点ギリギリしか取れないって?ちゃんと勉強しなよ。理解力結構いいし、ちゃんと勉強すればもっと点数取れるよ。」

次はここだなと英語の問題に付箋を貼る。

「なら、私の名前、ちゃんと分かる?」

「分かってるに決まってるでしょ。君の名前……は……」

続けようとして、言葉がつまる。この子の名前って、なんだっけ?

いや、ちょっと分かんなくなってるだけ。たまに名前をど忘れすることくらいあるし。きっとそれ。

「じゃあ、私といつから同じ学校だった?いつから友達だった?」

その質問に、さらに私の頭は混乱する。

いつから?小学校からじゃなかった?

いや、違う。高校からのはず……?

あれ?転校生だったんじゃないっけ?

目の前の彼女はニヤニヤと笑い続けている。

そして、体の色が、形が、変わっていく。私たちが宇宙人と言われてイメージする姿とは程遠く、けれど、宇宙人と言われて納得がいくような、そんな姿に。

こんな光景を見たくなんてないのに、目を閉じられない。

「私の事、なーんにも分かんないよね」

教室が突然暗くなる。空には、無数の星が輝いていた。


「ここ教えて」

そう言った友人の声で意識が戻った。

夢?は、未だ頭の中に残っている。息が詰まって、言葉が話せない。

何も答えない私に、彼女はつまらなそうに

「寝てたの?」

と聞いてきた。夢の中の声とは違う。この子の名前は……

「ねぇ、宇宙人っていると思う?」

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