第15話 約束

 ヒナちゃんにその場を任せて、僕はナックルさんを背負いながら急いでデ・ロワーに戻った。


「ペーターさん、出撃です!」

「ん? あぁ、あれなら不発で終わったよ」

「ふ、不発…? ウソ~っ!」


 せっかくキツイ思いしながら走ってきたのに、大損じゃん! でも、汗かいたらスッキリした。


「それより、フラットくんには休むよう言ったんだからさ。休んでおいで」

「良いんですか…?」

「私もいるから大丈夫! それにさ、エドもフラットのこと、少しは気に入ってるみたいだし」

「えっ?」


 気に入ってるかどうかなんて、分かんないよ。僕はただ、エドに手を伸ばした。それだけで、気にいるわけがないのに…。


「とりあえず、ナックラーは降ろしていいよ。俺が医務室まで運んでおくから」

「あ、じゃあお願いします」


 僕はナックルさんを背中から降ろすと、ペーターさんがぐったりとしているナックルさんの肩を抱き、オフィスから出て行った。


「うわ、背中びしょ濡れじゃん! ほら脱いで、貸し出し用のシャツあるから」

「え、良いんですか?」

「もちろん! あとタメ口でいいよ」

「でも先輩だし…」

「先輩後輩とか、私は大っ嫌い! だから良いの!」


 上下関係気にしない人なら分かるけど、嫌いって。しかもこれくらいの迫力で言うって、何かあったのかな。


「うん、分かった。気にしないようにするよ」

「それでよし! それにしても、エドがフラットを気に入ってること、知らなかったんだ」

「うん。だって、そんな素振り見せなかったし…」

「そっか。でも、あのエドに近づこうなんて、よくできたよ」


 やっぱり、避けられてきたんだ。いつもそう、僕はそういう人にばっかり出会ってるし、仲良くなってる。

 不思議な子って言われてきたけど、僕は当たり前に思ってた。大人になった今なら分かるけど、分かったからこそ僕にしかできないことだって言える。


「言われ慣れてる。僕にしかできない芸当だとか」

「だと思った。それでさ、エドが好きなのは-」

「龍柄でしょ? 気付いてるよ」

「そう? じゃあこれ。実はマドールさんがさっき来てね。取り替えてくれたんだ」


 そういえばマドールさん、僕がエドの分を買うとき、あまり良い顔してなかったっけ。

 そういうことだったのか。


「じゃあ任せるよ。エドって、可哀想だから」

「えっ、そうなの?」

「あ、ううん! 何でもないの、気にしないで!」

「えぇ…なんでどっか行っちゃうの?」


 何か隠してるのかな。それにエドが可哀想って。僕の知らない間に何があったんだろ…。

 でも、これ。龍のイラスト入りのシャツか。子供向きかよ。


「こういうのが好きっていうのも個性って言うのかな。よし、エド探し再開!」


 僕は新たなプレゼントを抱えて、颯爽とオフィスから、ビルから飛び出した。

 僕はくじけたりしない、諦めたりしない。何度だってぶつかって、何度だって失敗してやる。今までそうやってきたんだ。僕の全力に、「限界」の2文字はない!


『緊急警報! 緊急警報! 不発に終わった空間の歪が再び発生! 至急避難を始めてください!』

「またぁ⁉︎ 行かないわけには…いかないよね。エドも来てると良いけど!」


 外に飛び出して早々、また空間に歪って。でも今のエドなら絶対近くにいるはず! そう信じて、僕は現場に向かった。

 何がなんでも僕がエドのそばにいるってこと、1人じゃないってこと、伝えたいから。約束したいから。僕が1番知っていることを、エドに。

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異世界線に流された僕の戦闘記 〜Light Fallen Angels〜 桜木 朝日 @asahi0318

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