第35話 魅惑のコーヒーカクテル

 コーヒーベースなる物をもらった。

 コーヒーを濃縮した液体で、カフェオレなんかを楽しむ物らしい。


 普通にストレートで飲むには、甘すぎるし苦すぎる。

 どうしようか……。


 普通に牛乳で割ってカフェオレ、レンジで温めてバニラアイスにかけるアフォガードもいいけれど、もうちょっと工夫したい。


 そうだ! アイリッシュ・コーヒー!


 ウイスキーとホットコーヒー、生クリームと砂糖を混ぜて作るカクテルだ。

 おお! これなら、コーヒーベースを美味しく飲めそうだ。


 このアイリッシュ・コーヒーとは、昔、飛行艇が給油する際に外に出されて寒い思いをする乗客達のために考案されたカクテル。

 冷えた体に温かいカクテルは、ほどよく染み渡ったことだろう。

 ほろ苦く、甘さを加えた温かいコーヒーにウイスキーが香る。冬にピッタリの一杯だ。


 ……それにしても、当時は飛行艇に乗るのは、上流階級の人々。一般人には、飛行艇のチケットは、とても手が出なかったはずだ。


 普段澄まし顔した上流階級の紳士や淑女が、寒さで凍えながら啜るコーヒーのカクテル。

 どれほど、たった一杯のコーヒーに救われただろう。どんな顔して飲んでいたのだろう。

 その光景を想像してみれば、面白い。

 

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