第30話 お手軽インスタント
これだけ本格的なコーヒー豆のお話をしてきて、三十話目でインスタントの話かい!
ツッコミが脳内に聞こえます。響きます。
ですが、はい、インスタント。今回は、インスタントコーヒーの話なのだ!
強引にお話は進めるので、まぁ楽しんでほしい。
だって、これほど手軽にコーヒーを楽しめる方法はない。人間ってすごい。
様々な種類のコーヒーの木を栽培し、ジャスミンのように香り高い花々を咲かせ、コーヒーチェリーを採取して。
焙煎して、掃除して。挽いて、掃除して。ドリップして、掃除して。
そして、手間も丹精も込めたコーヒーを、乾燥させて。欲しい時に手軽に飲めるように加工したのだ。すごい!
インスタントコーヒーの原理は、人類は様々な方法で昔から利用してきた。
日本では、高野豆腐。
高野豆腐は、生活の知恵が生み出した、古い古い原始的なフリーズドライの技術。
その技術を発展させた物が、インスタントコーヒーにも使われている。
そして、インスタントの技術の発展は、軍事利用のためだったという。
兵士の食糧を長期間保存させるため。缶詰よりも軽くて使いやすいフリーズドライを発展させた。
その軍のための技術が、今や様々な食品を保存し楽しむために使われているのだ。
それって、使い捨てられた戦車に蔦が絡まっているような、海の底の軍艦に魚が棲みついているような。何とも言えない諸行の無常を感じし、歴史の凄みを考えさせられる。
インスタントコーヒーの褪せた香りは、たくさんの歴史と技術の末裔なのだ。
今はどうしても、ドリップしたてのコーヒーの風味を保つことは難しい。だが、きっといつか、ギュッと淹れたてコーヒーをそのまま濃縮して閉じ込めたような、美味しいインスタントコーヒーが誕生することだろう。
だって、人間って、すごいもの!
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