第13話 え、コーヒーを洗礼? 祝福でなくって??
千六百年頃のイタリアの話。
日本では、関ヶ原。家康や石田三成が睨み合っていた時代。
その時代のイタリアで一度コーヒーが悪魔の飲み物と言われてしまったことがある。
そりゃ、コーヒーの原産地は、キリスト教の大嫌いな異教徒の地。しかも、コーヒーには、前述したように、薬効がある。
それはそれは、悪魔の飲み物判定を受けてしまうのも、当時の思想を考えれば仕方ないような気がする。
しかし、当時のローマ教皇、クレメンス八世が、このコーヒーを一口飲んで気に入ってしまったから、話は変わる。
「マジ美味くね? これ、皆で飲みたくね?」
そんな軽い口調ではなかっただろうとは信じたいが、クレメンス八世は、コーヒーを堂々と飲むための奇策を考えて出してしまったのだ。
そう。表題の通り、コーヒーに洗礼を受けさせたのだ。
せ、洗礼??
信者ではないが、学校や人との関りの中で、教会のミサに参加したことがある。記念メダルやスカーフに聖水をかけて祝福を神父様が授けているのも見たことがある。
そう、通常、無生物には「祝福」を授けるのだ。
洗礼は、人間だけ。
だが、それでは、その目の前にあるコーヒーは飲めても、コーヒー全般が大丈夫になるとは思えなかったのだろう。
だから、どうしても堂々とコーヒーを飲みた……いやいや、キリスト教徒に美味しい飲み物を飲ませてあげたい優しいクレメンス八世は、この奇策にたどり着いたのだ。洗礼を「悪魔の飲み物」であるコーヒーに授けることで、悪魔を欺こうとしたのだ。
洗礼……香油をかけて、洗礼名を授けて……。
ひょっとして、コーヒーにも洗礼名が?? そう思って色々と調べてみてはいるのだが、今のところコーヒーの洗礼名を記した文献には、出会っていない。
さすがに、ただのパフォーマンスとしての洗礼の儀であったから、洗礼名までは付けなかったのかもしれない。
その後、教会のお墨付きをもらってヨーロッパ中に広まったコーヒーが、多彩な発展を遂げたのだ。ぜひ、クレメンス八世にも、楽しんでもらいたかった。
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