第6話 初対面

 よーく思い出してみよう。うん、これはいわゆる詰んだというやつだ。父さんは昨日なんて言っていた?「明日は早めに帰ってくる」だと...。

 父さんに早く帰ってきて欲しくないわけじゃない。だが、今日先輩が来るのはいつと言っていた。そう午後だ。


「これはやばい予感が...」

なぜか早起きしてしまいこの時間をどうするか考えていたら、とんでもないことに気づいてしまったのだ。

 ま、まぁどうにかなるだろう。先輩だってお昼過ぎに来るだろうし、父さんだって帰ってくるのはどんなに早くても17時はまわる。これがフラグにならないことを祈るばかりである。いや、頼むフラグにならないでくれ。


キッチンへと向かい父さんが起きてくる前に軽めの朝食を作る。

「おはよう春樹。いつもありがとう」

「父さんのおかげでご飯が食べれてるからね。これくらいはしないと」

そう言いながらテーブルに朝食を運び、コーヒーを淹れる。


「父さん帰りは何時くらいになりそう?」

朝食を食べながらそれとなく何時に帰ってくるか聞いてみる。

「なんだそんなに夕飯が楽しみなのか」

「うん、そんなとこ」

「早くても17時になるんじゃないかな。買い物もあるだろうし」

予想通り帰りは17時頃、本人から確認を取れば確実だろう。ひとまず、フラグを折ること成功したようだ。

 その後、父さんを見送り午後までの時間を落ち着いて待っていることができず、再び部屋を掃除し始めたのであった。






 ピンポーンという音が鳴る。もう誰かは分かってるので、玄関へと迎えにいく。

「遊びにきたぞ。後輩くん」

「先輩なんですかそのキャラ設定」

いつもとは違う口調で、一体なんのアニメに影響されたのだろうか。

「いや~、昨日呼んだ漫画のキャラに影響を早速受けまして賢い先輩を演じてみました」

「あとでその漫画教えてくださいね。読みたいので」

先輩と話すきっかけは、読書タイム用に持ってきていたライトノベルだった。


「で、宮野くん。猫ちゃんはいずこに?」

「そんな急がなくてもリビングにいますよ」

「早くモフらせてくれ...。我は猫を欲しているのだよ。あ、おじゃましまーす」

そう言いつつ先輩は綺麗に靴を並べて、さりげなく俺の手をつかんで早くいこと催促してくる。




リビングに行くとクッションの上で丸まっているむぎがいた。

「あそこでまるまっているのがうちのむぎです」

「むぎちゃんっていうんだ可愛い~」

先輩はむぎに警戒されない程度の早さで近づいていく。といってもそれほどむぎは警戒心が強い方ではなく人に慣れているので逃げたり噛みつくことはない。


「わぁ、ふわふわしてる。むぎちゃーん可愛いね~」

むぎは触られて嬉しいのかごろごろと喉を鳴らしている。先輩は大満足のようだ。よかったなむぎ、好きなだけもふられるんだぞ。

 猫の前で人は無力である。先輩も例外なく、むぎに話しかけている姿はなんと言うんだろうか可愛く見えた。むぎに意識が集中していたおかげで、鼓動は落ち着いていたがその様子を見ていたら少しずつうるさくなっていった。







「ねね宮野くん、お部屋行っても良いかな?宮野くんが好きな小説とか漫画見てみたいからさ」

これを予期していなかったといえばしていた。だからこそ、あんなに掃除していたのだ。俺のおすすめとか色々話していたので気になっているんじゃないかとは思っていた。自分の部屋に女子が入るこれだけでもさらに心臓はうるさくなっていく。

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この恋は終わっている 早蕨琢斗 @sawarabi-takuto

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