第5話 お前しか勝たん
ついに明日土曜日。
先輩が明日この家に、先輩が来る。綺麗に片付けなければ川西先輩にどう思われるか分からない。
~二時間後~
「ふぅ、これだけ片付ければ問題ないだろ」
男友達が来ることは何度もあったが、女子がこの家に来るのは初めてだ。なんかそわそわしてしょうがなかった。俺が目的ではないのになにしてんだか。
「帰ったぞ~」
ドアが開く音がして、聞き慣れた声が聞こえた。
「おかえり、父さん」
俺たち家族は父さんとの二人暮らしである。母さんは俺が小学生になってすぐに癌で亡くなって、男二人で頑張って生活をしている。
「なぁ、春樹なんか部屋が綺麗になってないか?」
部屋に入って違和感に気づいたのか父さんが聞いてくる。ここは少し隠そう絶対に女子の先輩が来るなんて正直に話したら、いじられるのは確定している。なんとしても隠し通さなければ。
「あぁ、最近片付けてなかったから部屋を綺麗にしたくなってな。たまには自分から進んでしなきゃと思ってやった」
部屋が少し散らかっていたのはほんとだ。嘘はいってない本当に散らかっていたのだ。
「春樹が自分から進んでねぇ。何か隠してるんだろうが、もう思春期の男子だ隠し事の一つや二つはあるだろう。ここは深掘りしないでやろう」
やっぱ父さんは理解あるな。思春期男子のあるあるで理解してくれたと思うが、部屋に何か隠したと思っているのだろうか。まぁ、明日のことがバレるくらいなら勘違いされることなどどうってことない。
「ありがとう。あんまり詮索しないでくれると助かるよ」
「部屋も綺麗にしてくれたし、何も詮索はしないよ」
息子の触れて欲しくない部分には触れず、察してくれるいい親だと思う。これは世に言う親ガチャは大当たりだろう。
「さ、それより飯にしよう。今夜は遅くなってしまったから簡単なものしか作れないがいいかい?」
「あ、それならもう作っといたよ。今日の当番は俺だから、父さんは明日だよ」
「そういえばそうだったな。じゃ、明日は早めに帰ってきて父さん特製料理を振る舞わなきゃな」
父さんと俺は、家事をある程度分担している。これは母さんがいなくなってから、決めたことである。お互いに忙しい月などに負担を減らすために、担当曜日を変えたり減らしているのでよくこういうことが起きる。
「楽しみだな。腹すかせておくよ」
「父さん頑張っちゃおうかな~」
「ほどほどにね」
そんなやりとりをして、ご飯を食べ終え就寝をする時間になった。
「はぁ、明日もってくれよ俺の心臓」
変に緊張してしまう俺の体が嫌になる。これがもし好きな人が家に来るとなったらそうなるんだろうか。
ベットに横になりながら、考えても無駄なことを考える。明日の自分頑張れ...。
にゃ~おと鳴き声がしたと思ったら、ベットの上に飛び乗ってきた。
「お、むぎ。どうした可愛がってほしいのか?」
喉を鳴らしながら、擦り寄ってくるので体をなでてやる。
「むぎ明日は頼んだぞ」
結局むぎ頼りかよとくすりと笑って、眠りについた。
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