ドライウントドライスィヒ 絵の中の二人

『ジャラッ』


『御約束を頂きました金額通りに報酬を頂戴しまして、男爵バローン閣下には心底よりの深い感謝の念を抱いております。騎士シュヴァリエ様』


城館内に割り当てられて室内にてフロリアーヌ女史は、伯父上が依頼達成の報酬として御支払になられました、帝国ターレルの硬貨が入っている革袋を、美しい瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳で御覧になられながら感謝の言葉を述べられました。


『フロリアーヌ女史は、報酬を何に使われるのですか?』


十代後半の画家志望の芸術家の卵でもある灰色グリザイユ君の疑問に対して、十三歳の可憐なフロリアーヌ女史は美しい金髪ブロンデス・ハールを揺らしながら頷かれまして。


『私は帝国自由都市リューベックにある叡智ヴァイスハイト学園にて根元魔法を学んでいますが、学費と生活費は金融機関から身体を担保に融資を受けて学生生活を送っています。返済が滞れば娼館フロイデン・ハオスで働いて残金を返さなければいけなくなります。グリザイユさん』


帝国の君主であらせられる皇帝陛下の直轄領でもある帝国自由都市リューベックは、豪商により構成される参事会が合議制で統治をしていますが。国内でも極端な能力主義の文化がある団体ハンザの盟主ですので、生き馬の目を抜くような環境に適応した者だけが成功を収める事が出来ます。


『グリザイユさんには今回の依頼に御協力を頂きましたから、貴方が描く絵の画材となり感謝の気持ちを示したいと思います』


フロリアーヌ女史の申し出に対して、グリザイユ君は満面の笑みを浮かべまして。


『ありがとうございます。フロリアーヌ女史♪』


フロリアーヌ女史は傭兵ゼルドナーとして伯父上に雇われましたが、本分は叡智ヴァイスハイト学園で根元魔法を学ばれていられる学生ですので、グリザイユ君の絵の画材を終えましたら、リューベックに帰られるのが残念です…。


『もし宜しければ、騎士シュヴァリエ様とフロリアーヌ女史の御二人を絵に描きたいのですが?』


グリザイユ君の提案を受けたフロリアーヌ女史は、美しい瑠璃之青アツーア・ブラオの瞳で真っ直ぐに自分を見詰められまして。


『私は構いませんが、騎士シュヴァリエ様は如何いかがなさいますか?』


『喜んでフロリアーヌ女史と共に、グリザイユ君に描いてもらいます♪』


もう二度とフロリアーヌ女史とはお会い出来ないかも知れませんから、グリザイユ君が絵を描き終えましたら購入して、自室に飾り毎日鑑賞して過ごす日々を送る事にします♪。

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天より素質を授かりし美しい人 @curisutofa

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