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映画は始まった。
正直2人についてきたこともあり、内容は詳しくは知らない。ただ伊坂くんが隣にいる。
それだけ私はとっても幸せだ。
その隣にいるメスがいなければもっといいのだが…。
伊坂くんの横顔…なんて素敵なの!
これだけでご飯3合は余裕で食べられる。こんなラッキーなことないから嬉しいわ。
「高見さんこのシーンいいよね」
「映画だと迫力が違うね。それに少しアレンジされてていいよね」
横のメスと会話をしている。ほんとに邪魔だわ。だいたいあなたは伊坂くんのなんなの?
ただ同じ大学の同級生ってことくらいでしょ?
私は前からずっと知ってるし、身長と体重、右目と左目の視力だってなんだって知ってる。
でもそんなことこの女は知らないでしょ?
知ってる?伊坂くんの姉弟とか?
顔がそっくりでもう最高よ。お姉さまは伊坂くんに女性らしさがでて母性の塊のような素晴らしい人だし、弟くんは伊坂くんを幼くして愛らしさをマシマシにした可愛さがあるのよ?
知らないでしょ?私はしってるのよ?
映画は進んでいく。ただ映画の内容より伊坂くんの方を見てしまう。
伊坂くん。伊坂くん。伊坂くん。もう好き。大好き。今すぐ抱きつきたい。でもそれはさすがにハードルが高すぎて無理だわ。
そんな時にふと伊坂くんの肘掛に置いてた腕があの女に当たったようだ。
「あ、ご、ごめんね伊坂くん」
「うん?あぁ、大丈夫だよ」
おいおい。何しとるんだ。なにを伊坂くんのたくましい腕に触れてんだ。お前のようなメスが軽々しく触っていい代物ではないんだぞ?
私なんて一度たりとも触ったことがない。触りたいけど無理だわ。たぶん過呼吸起こして死んじゃう。
しかもなんか照れちゃって。絶っったいに伊坂くんのこと性的な目で見てるなこいつ。
女だからそういう勘は一瞬でわかる。だって私はそういう目で見てるから。
いや、それは本能的なもので伊坂くんの色んなところを知ってるから好きなんだけど。
そんなことしてるうちに映画はエンディングが流れた。他の客は帰る人もいればそのままエンディングを見ている人もいる。
2人はエンディングを見るタイプであった。私は当然2人が立つまで同じく席にいた。
結局内容は分からずじまいで終わった。
でも伊坂くんの隣にいれたことはお金を払うだけの価値があったと思う。
「さてと行こうか?」
「そうだね。お腹も空いてきたからお昼でも食べようか?」
2人は立ち上がって帰ろうとしていた。
もちろん私も帰る。しかしすぐに立ち上がってしまってあれなので、ちょっとタイミングをずらして行くことにした。
今度はお昼を食べるのか。ついて行くしかないな。あのメスが妙な行動を取らないように監視しなければ…。
お昼も当然あとをつけて行ったものの、ただ2人が楽しそうにお昼を食べたりウィンドウショッピングしたりしてそれを見せつけられてるようで、かなり不快だった。
まるで恋人である。悔しかった。
私には勇気がなくてそのような行動は取れない。ずっとこんな感じで伊坂くんと触れ合うこともできない。
彼女が羨ましかった。勇気さえあれば、あの時もし違った行動をとっていればあそこにいたのは私だったのかもしれない。
そう思うと自分のチキンっぷりが嫌になった。
山南や基山といった面々にも遅れをとらず、新興勢力である高見という女にも負けることは無いはずである。
でもいつか伊坂くんの隣にいるのは私だと信じて…。伊坂くんの事を知り尽くしていく。
そんな私の日常である。
田所さんの観察日記〜stalking diary〜 石田未来 @IshidaMirai
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