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私は伊坂くんたちが入っていた映画館に追うように入っていった。そこそこ人もいるが伊坂くんと高見という女を見つけるには容易い。

伊坂くん匂いですぐにどこにいるかわかってしまう。2人はチケット発行機に並んでいた。

遠目から見ればただのカップルに見えてしまうのが心底腹が立った。


どのタイトルの映画観るんだろう。タイトルが分からなければ私も買うことができない。先程の会話を推測していくとしよう。

伊坂くんはあの作品ファンだと言っていた。

となるとこの映画のラインナップから察するに 伊坂くんの好きな本のタイトルと同じ「緋色の群青」というアニメのものであると考える。

他にアニメ系の映画はあったが前に好きだと言っての聞いたことがある。



多分これの可能性が高い。私も並んで買うことにした。席は…少し後ろ目の方が観察しやすいかも。あと出来れば真ん中寄りで…。

操作していくと奇跡的にいい感じの席があった。ここにしよう。

購入したあとは案内がくるまでまた2人を観察していた。

2人はポップコーンと飲み物を買っていた。


「高見さんはどの味にする?」


「私は…キャラメルにしようかな?伊坂くんはどうする?」


「俺もキャラメルがいいと思ってたから、大きのひとつ買おうか?」


「そうね。飲み物は私はオレンジジュースにするね」



……。なんなのあの淫乱メスは。伊坂くんの恋人みたいに振舞って。ホントに見てて癇に障るわ。



私は持ってたチケットを思わずグシャッと潰してしまった。伊坂くんとあんな感じでポップコーン買いたい。羨ましい。

ふつふつと湧き上がるどす黒い感情を抑えて2人を観察し続けた。



ようやく案内が始まりチケット確認があった。

伊坂くんたちより少し後ろくらいに列を並んでいき上映場所まで行った。


そこそこ人が入っており皆各自席の方に座って喋ったりして上映を待っていた。

伊坂くんはどこにいるかな…。

自分の席を確認しつつ2人がどこにいるか確認する。


嘘……。私は思わず席とチケットを2度見した。そこに書かれていた場所の隣には伊坂くんがいた。なにかの間違いだと思って見るがやはりあってる。


ということは伊坂くんの隣で私は映画観るということだ。奥の方にあの女はいた。

なんということ。でも伊坂くんの隣にいれるなんてめちゃくちゃ嬉しい。


で、でもバレないかな?だ、大丈夫かな?不安で仕方がなかった。薄暗いからバレたりはしないな。うん。


伊坂くんの隣。手汗がすごい出てきた。多汗じゃないけど、すごく汗が出てくる。

そっと隣に座った。


あぁ………。伊坂くんの匂いがするぅ。いい匂い…。こんなに近くに伊坂くんが。

こ、これってまるで私と伊坂くんがデートしてるみたい?


「伊坂くん。これみて」


「あぁ、これこの前いったやつの最新のやつ?」


あの女。伊坂くんと楽しそうスマホを見て。

しかも距離近いって。肩もぶつかって。頭も当たりそうだし。何よ。

私もあんなふうに伊坂くんとしたいのに。チケットをグッと握り潰して2人の方をチラ見していた。


でも、なんかすごい幸せ。ほぼゼロ距離に伊坂くんがいるって。ここは天国なのかな?肘置きに伊佐くんの左手がある。

あぁ、触りたい。スリスリしたい。綺麗な手だなぁ。爪もちゃんと切りそろえられてて清潔感がすごい。


2人よりも手の方に段々と目線が吸い寄せられていく。

そのうち我を忘れてうっかり彼の手に触れてしまった。


「あ、す、すすみせん」


「あぁ、いえいえ大丈夫ですよ」



あぁ、なんてこと思わず触れてしまった。私としたことが私としたことが!!

理性を失って手を触れるなんて…。あ、でもすごい気持ちよかった。柔らかいけど男らしい手だった。

ご馳走様でした。後で使わせてていただきます。

棚からぼたもちのような、そんな気分の私だった。


「伊坂くん。私ね今日すごく楽しみだったんだ」


「俺もだよ。高見さんと一緒に映画見れてすごい嬉しいよ」


おいおい。なんだ?その会話。あの女ここぞとばかりにアピールしてきて。そんなの今更言うことじゃないでしょ?なんで今言うの?


「私さ。男の友達とか全然いなくて趣味あう人も大学にいないし。でも伊坂くんとは話があって面白いし」


「高見さん本好きだもんね。多分探せば大学の中にいると思うよ?」



「私人見知りだからあんまり話しかけることできなくて。伊坂くんの時はそっちから話しかけてきてくれたし」


この女。もしかして伊坂くんに迫ってるのか?なんか明らかにメスの顔してるんだけど。色目使って伊坂くんをたぶらかそうとしてるわ。


「女の人であの漫画好きなの珍しかったからねつい声掛けちゃったけど」



そういう事か。餌で釣ってきたということか。

なんて汚い手を使ってるの。この淫乱メガネ。

他の女よりも危険だわ。




ふたりが会話をしていたうちに照明がさらに暗くなっていき、劇場の広告が始まっていった。











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