第2話 2ページ目 伊坂くんと高見という女

3月某日の日曜日。


私は伊坂くんが出かけるのを見た。服装的に外出用のちゃんとした格好をしていた。

気になる。あれって誰かとどこかに行くからあの格好をしてるのよね?

髪もきちんとセットしてるし。まさかデート!?デートなの!!?でも男の人があんな感じな時って大体デートよね!?

一体誰と?この前の高見って女?それとも山南?基山?誰なの??私は伊坂くんの周りにいる女は一通り把握している。

なんなら相関図的なものも作って伊坂くんに集っているのか事細かに書いている。




山南は伊坂くんの幼馴染を自称している女。幼馴染と何かとかこつけて彼の家に転がり込んでくるし、距離感が恋人のそれと変わりない。

私にはわかる。あの女の目は明らかに伊坂くんにやらしい感情を持っている。私にはわかる。

基山は高校時代の同級生の女で伊坂くんとは同じ部活に入っていた。あの女は真面目で優等生振っているが、伊坂くんの前になるとメスの顔をしていた。本人は隠してたつもりだけどバレバレだ。

そして最後はこの前の本屋の店員の高見という女だ。この女はデータが少ないからどういう女なのかはよく分からないが、親しく会話していたから完全に黒である。


私はたまらず伊坂くんの後を追いかけた。格好は目立たないように少し地味目にして、伊達メガネとベレー帽を被った。

一体どの女が伊坂くんをたぶらかしてきたのか分からないが、許さない。

電車に乗り、バレない程度に近づいて様子を伺った。




駅を降りると駅前の広場で待ち合わせをしていた。あの女は…。高見だ。この前の店員の格好等は違ってやけに気合いが入っていた。服装も身体のラインを強調するワンピースをきておりメイクも施していた。伊坂くん会うやいな手に持っていた本をバッグに入れ笑顔を向けていた。

あぁこれは完全にあれだ。メスだわ。全くなんていやらしいの。

伊坂くんにそんな顔を向けるなんてけがらわしい。伊坂くんも嬉しそうにしてるし…。なんかもうムカムカする。

絶対私の方が可愛いのに。自分で言って恥ずかしいけど。


「高見さんごめんね。待ったでしょ?」


「ううん。私も今来たところだから大丈夫だよ?」


いやそんなわけないだろ。伊坂くん来るまで本読んでいたのでしょ?さり気ない心遣いでアピールしてるのね。あのメスは。


「そう?じゃあ早速いこうか」


「そうだね。私楽しみにしてたんだよ?」


「俺もだよ!やっと見れるし!」


2人は楽しそうに話をしながら目的地に向かっていった。当然私は後ろから2人をつけていく。これは伊坂くんをあのメスの毒牙から守るためである。断じてストーカーではない。


「それにしても高見さんの格好可愛いね。大学の時はどっちかと言うとラフだから」


「え、あ、それは…その大学は日常だし…出かけるのにおかしくない格好にしないとって…」


高見という女は恥ずかしそうに顔を赤らめていた。伊坂くんに褒められているのが羨ましい。私にも言って欲しいな。いいなぁ…。


「高見さん普段からそういう感じの服装にすればいいのに。もったいないよ?」


「いや、でもさすがに大学もこんな感じで行くの恥ずかしいし…」


こっちから見ると雰囲気が恋人みたいで無性に腹が立つ。山南のあの馴れ馴れしさとは違った腹立たしさである。

私は思う。こういう一見清楚な感じの女はだいたいスケベであると相場は決まっている。それもむっつり系のやらしいやつ。

絶対にそうだ。だって私がそうだもん。大学とかそいうところでは優等生ぶっていて真面目にしているけど、伊坂くんのことを四六時中考えている。あの女は同じタイプだ。つまり同族嫌悪ってやつだ。


「まぁ…確かに大学で毎回毎回オシャレは面倒だしね…。俺も酷い時なんてジャージの時あるし」


「私も本当はジャージとかで大学行きたいんだよ?でも女でジャージってさすがにね」


「あー。でも浮いちゃうよね」


「うんうん。それに…こんな格好するのは伊坂くんと会う時くらいだし……」



あの女最後の方なんて言ったんだろう。ちょっとよく聞き取れなかった。多分あの女が伊坂くんに好意を持っていると仮定すると伊坂くんの前でくらいしかこういう格好はしない的なこと言うと思うんだよなぁ。


「高見さん?」


「何でもないよ?それより今日のやつちゃんと復習してきた?」


話題逸らしたな。そんな簡単に伊坂くんに気持ちが伝わると思わない方がいい。彼は天然タラシなところがあるから無意識なところがある。

いい例が私である。私は好意を伝えているがなかなか伝わらないから。もっと伊坂くんのことを知らなければ気づいて貰うことは難しいのだ。


「もちろんだよ。俺あの作品ファンだから昨日みっちり見てきたよ」


「私も好きだからね。特に今回のやつは原作ストーリーに繋ががってるやつだから、ほんと楽しみ!」



おそらくだけど会話的に2人の好きなマンガの映画なのかと思った。向かっているところも多分映画館ぽいな。

というかもはやこれはデートなのでは?男女2人が映画に行くってこれって映画デートだよね?


高見という女。完全にデートに誘ってたんだ。これは山南と基山に匹敵するほどの淫乱メスね。これはもうブラックリスト入りよ。完全に伊坂くん狙ってるもの。女の勘でわかる。

これは私も映画館に入って2人の動向を監視しないと…。
















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