第1話 田所さんの観察日記 別視点

今日は待ちに待った最新巻の発売日だ。

俺は早く続きを読みたくて読みたくて待っていたんだよ。単行本派の俺は少年誌の方はあえて読まずに待つ。


さてと、最新巻は…。お、あったあった。これだよこれ。早く帰って読まなければ。


ついでに、このマンガも読みたかった買っていこうっと。


マンガコーナーの奥の方にある青年コーナー。ここには18禁のマンガとか置いてある。

最初の頃は恥ずかしくてなかなか行けなかったけど、今となって慣れてしまった。


いい感じのタイトルないかなっと探してみたら、ちょっと惹かれるものがあった。

タイトルは言えないが、これは興味をそそられる。


「おぉ…これは…なかなか…」


あまりじっくりと読みすぎると女性客から侮蔑の目で見らられるからさらさらと流し読みをしていた。流し読みでもなかなかに内容は入ってくるものである。

家でじっくり読もう。そう想い少年マンガにサンドイッチして持っていった。


「ん?なんか目線が…」


後ろを振り向いたものの、特に誰かに見られているわけではなかった。

ただの気のせいか。まぁこんな普通の奴、見てもしょうがないしな。

さてとレジに行こう。そこそこ並んでいたが、新巻が読めるという幸福を感じればこんな少しの列などどうということはない。

段々と列は進み順番が回ってきた。


「あれ?高見さん?今日バイトだったんだ」


「伊坂くん?本買いに来てたんだね」


大学の知り合いの高見さんと偶然出会った。今日はシフト入ってたんだ。流石に知り合いの女の子にこの本見られるのはきちいな。

案の定高見さんはサンドイッチしていた成人本を手に取った時にこちらをジト目で見てきた。


「私に成人本をレジで打たせるなんて変態さんだね?」


「いや、ちょっと…たまたまだよ…」


知り合いじゃなければ羞恥心は抑えられるけど流石に知り合いだし。なんとも言えない気持ちが込み上げてくる。


「伊坂くんのスケベ」


「高見さんスケベはやめてよ…」


ジト目だったものの少し笑って対応してくれた。お釣りをもらい、本を受け取った。


「そうそう伊坂くん、今度日曜日の約束忘れないでよ?」


「あぁ、分かってる。大丈夫大丈夫!」


「この前は急にキャンセルされたからね。ちゃんとその分もお願いね?」


この前高見さんと約束してたのにドタキャンしてしまったから、今度は約束守らないとな。

じゃないと今度はブチ切れられるな。


「ありがとうございました」


「またね高見さん」


「うん」


ニコニコ笑って手を振ってくれた。大学生にしては弾けてなくて落ち着いた感じの人だけど、綺麗だし。こういうところ可愛いなと思った。

レジ袋に入った本を片手に家に帰ることにした。


大学入って1年経ったが特に生活がこれまでと変わらない。友達はそこそこいるし、楽しいがやっぱり違和感を感じる。




誰かから向けられた視線である。これまでも感じたことはあったが別に変わったこともない。


でも違和感が拭えない。だからといって何も無いからどうすることも出来ない。こんな感じのことが数年前から感じていた。


「マンガとかってこういう時可愛いヒロインがつけてたみたいなことあるけど、そんなわけないか」


家に帰ることにした。




「ただいまー」


「あら、亮ちゃんおかえり〜」


家に帰ってリビングへ行くとエプロン姿の姉ちゃんがいた。仕事から帰ってきて夕食作っている途中だった。


「お風呂沸いてるから入ってきなさい〜」


「うん、わかったよ」


着替えと寝間着を取りに自室に戻った。

タンスから取り出して洗面所へ行く。服と下着を素早く脱いで洗濯機に入れた。


「ふぅぅ…」


暖かい湯船に身体を浮かべた。気持ちよさのあまりに声が出てしまった。

そしてある程度温かさに慣れてきた時に高見さんとの約束を思い出した。

先週は都合悪く断ることになったが今回はきちんと守ろうと思う。約束が出来なかった理由としては急に家にいとこが来て相手することになったためである。


今度はそんな急なことはないから大丈夫だろう。


「高見さんって少し大人しめだけど美人だよなー」


今日見て改めて思った。他の学生の友達に比べると落ち着いた雰囲気を持っている。

でも意外と話すと面白いし感情豊かである。


もうちの大学いるし結構美人な娘多いよな」


田所さんとは高校時代からの同級生だがあまり、というか全然話したことがない。

というか住む世界が違いすぎる。ずっと人気者だったし。凄かった。

大学になっても相変わらずだし、大学広報の新聞なんかにしょっちゅう載ってるし。


「田所さんと話してみたいけどなー。でも俺なんて全然相手にしてもらえなさそうだし。論外だろうな」



そんなハナから無理なこと考えていた。












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