第12話 【雪さんの能力】

「雪さん、例えば、とても悲しいことがあったときや腹立たしいことがあったとき、身の回りのものが冷たくなったり、凍ったりしたことはないですか?」

僕の言葉に雪さんは頭の中で過去を遡っているようだった。

少しの間、考え込んだ雪さんは口を開いた。

「そういえば、学生の頃、友人と意見の食い違いがあって、口喧嘩をしたことがあったんです。その時、落ち着こうと水筒に口をつけたんですけど、中身が凍っていて飲めないことがありました。最近でいうと主人と食事の支度中に口論になって、熱いくらいだったはずの料理が冷めきってしまったことがありました。なんでだろう?とは思っていたんですけど、そこまで、気にしたことがなかったのでたぶん、他にも色々とあったのかもしれません。」

雪さんの話を一通り聞いて、僕は答えた。

「雪さんは気持ちが高ぶると身の回りのものを冷やしてしまう能力があると思います。さっき、僕が出した紅茶があっという間に冷めたのは雪さん自身が知らないうちに能力を使っていたからだと思います。」

「・・・私にそんな能力が?」

信じられないという表情で雪さんが僕を見た。

「あの。さっき、私の名前の漢字を瞳の色で・・・って、おっしゃってたじゃないですか?あれは・・・なぜ?」

困惑した表情で僕を見ている雪さんに僕は僕自身のことを話すことにした。

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小説「日常」 浅沢明茶 @asazawaasa

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